レベル表現

レベル表現：対数尺度による信号強度の表現

レベル表現とは、主に音響や通信などの分野で用いられる、信号の強さを表す方法です。対象となる物理量の基準値に対する比の対数をとることで、その大きさを表現します。単位としては、デシベル（dB）が広く用いられています。

レベル表現は、信号の増幅や減衰といった、量の積や商が重要な役割を果たす場面で特に有効です。非常に大きな値や小さな値が混在する場合でも、対数を使うことで扱いやすくなります。これは、対数尺度が人間の知覚特性にも合致しているためです。

レベル表現の定義

正の量Aの、基準量A₀に対するレベルLは、以下の式で定義されます。


L = c log₁₀(A/A₀)


ここで、cは定数、log₁₀は常用対数です。cの値によって、ベル（B）、デシベル（dB）、ネーパ（Np）などの単位が定義されます。

ベル (B): c = 1
デシベル (dB): c = 10
ネーパ (Np): c = 1/ln10 (自然対数)

A₀はAと同じ種類の量で、同じ次元を持ちます。そのため、A/A₀は無次元量となり、対数関数の引数として適切です。国際量体系ではcは無次元量であるため、レベルLも無次元量となります。

AやA₀には、様々な物理量を選択できますが、エネルギー的な量（例えば電力）を選択することが標準的です。変位的な量（例えば音圧）の場合は、(A/A₀)²として二乗することがあります。
Aは、多くの場合、一定時間における実効値（エネルギー的平均値）ですが、瞬時値を用いても同様にレベルを定義できます。

レベル表現の性質

レベルシフト

基準量A₀をA'₀に変更した場合、レベルLは以下のように変化します。


L' = L + c log₁₀(A₀/A'₀)


これは、基準量の変更がレベルのシフト、つまり零点の変更に相当することを示しています。各分野では、基準量A₀に標準的な値が設定されています。

音響におけるレベル表現の例

音響の分野では、以下のレベル表現が用いられます。

音圧レベル (Lp): 音圧の基準値は、p₀ = 2.0 × 10⁻⁵ Pa です。

Lp/dB = 20 log₁₀(p_rms/p₀)

音響パワーレベル (LP): 音響パワーの基準値は、P₀ = 1 × 10⁻¹² W です。

LP/dB = 10 log₁₀(Pm/P₀)

騒音暴露レベル (LE): 騒音暴露量の基準値は、E₀ = 1 s × p₀² です。

LE/dB = 10 log₁₀(E/E₀)

レベル差

同じ基準量に対するレベルL₁とL₂の差は、基準量に依存しません。これは、基準量の変更が両方のレベルを同じだけシフトするためです。

対数尺度を内包する他の単位

レベル表現と同様に、対数尺度を用いて数量や物理量を表す指標が他にもあります。「桁数」などがその例で、非常に大きな数を簡潔に表現できる点で、レベル表現と本質的に同じです。これらの指標は、定数倍することでデシベルやネーパに換算できます。

まとめ

レベル表現は、対数尺度を用いて信号の強さを表現する便利な方法です。特に、増幅・減衰や桁数の大きく異なる値を扱う際に有効で、様々な分野で活用されています。基準量の変更はレベルのシフトに相当し、レベル差は基準量に依存しないという性質も重要です。 理解を深めるためには、音響学における具体的な例を参考にすると良いでしょう。

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