レム睡眠行動障害

レム睡眠行動障害（REM sleep behavior disorder, RBD）

レム睡眠行動障害（RBD）は、正常な行動や認知に問題がないにもかかわらず、レム睡眠時に身体が動いてしまう睡眠障害の一つです。この障害は睡眠時随伴症に分類され、特に50歳から60歳以上の年齢層に多く見受けられます。

病態について

通常、レム睡眠の際には脳が覚醒に近い状態で活動しており、全身の骨格筋は緊張を失っています。このため、夢の内容を実際に行動に起こすことはないのが一般的ですが、レム睡眠行動障害の場合、筋肉の緊張抑制機能が損なわれ、夢の中の行動を無意識のうちに実行してしまいます。

具体的には、粗い動作を伴う四肢や体幹の運動、寝言を発する（叫ぶ、泣く、笑う）、さらには立ち上がったり動き回るといった異常な行動が見られます。これらの行動は通常、20分から30分の間続き、その後は再び通常の睡眠状態に戻ります。

原因

RBDの発症には、脳幹部における脳腫瘍やパーキンソン病、オリーブ橋小脳萎縮症、レヴィー小体病などの基礎疾患が関与しています。しかしながら、約半数の患者は明確な基礎疾患を持っておらず、その原因は不明です。

診断方法

診断の際に重要なのは、異常行動が患者が見ていた夢の内容と一致していることです。患者は人や動物に追いかけられるなどの悪夢を体験することが多く、夢の内容と異常行動の間には一定の関連性が見られます。また、異常行動が現れた際やその直後に呼びかけたり体を揺さぶることで完全に目を覚ますことが可能です。

レム睡眠行動障害と混同されることがある夢中遊行症（夢遊病）やせん妄の場合は、迅速に目を覚ますことが難しく、行動中の記憶がない点で異なります。

治療法

レム睡眠行動障害と診断された場合、通常は薬物による治療が行われます。クロナゼパムやパロキセチンが使用されることがありますが、最近ではより安全で副作用が少ないメラトニンの利用が支持されつつあります。これらの治療法の選択においては、さらなる研究が必要とされています。

RBDの特性には無意識に行う暴力的な動作が含まれることもあり、同室者に危害を加えたり、室内の物を壊す場合もあります。このため、患者の周囲には注意が必要です。

まとめ

レム睡眠行動障害は、年代とともに増加する傾向があり、その影響は患者だけでなく周囲の人々にも及ぶ可能性があります。適切な診断と治療を受けることで症状のコントロールが可能です。今後の研究によって、より多くの患者が快適に眠れるようになることが期待されています。

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