レラントス戦争

レラントス戦争

レラントス戦争は、紀元前8世紀、ギリシアのエウボイア島で起こった、カルキスとエレトリアという二つの有力ポリス間の紛争です。この戦争は、エウボイア島に位置する肥沃なレラントス平野の領有を巡って勃発し、古代ギリシア世界全体を巻き込む大規模な戦いへと発展しました。

背景

紀元前8世紀のエウボイア島は、ギリシア世界において経済的に重要な地域でした。カルキスとエレトリアは、エウボイア島の西海岸に位置し、ギリシア各地への植民市建設を主導し、その発展に大きく貢献しました。当初、両ポリスは協力関係にありましたが、肥沃なレラントス平野の領有権を巡って対立が深まりました。当時、ギリシアでは肥沃な土地は貴重であり、アッティカやエウボイアで大規模な干ばつが発生したことが、レラントス平野を巡る争奪戦に拍車をかけました。

戦力

カルキスとエレトリアは、共に海外に植民市を建設し、強力な艦隊を有していましたが、レラントス戦争は主に陸上戦として展開されました。当時のギリシアでは、重装歩兵が普及する前であり、弓矢やスリングショットはあまり用いられず、軽装の剣士が主体でした。別の説では、騎兵が中心となって戦われたとも言われています。エレトリアは、歩兵部隊3000名、騎兵部隊600名、戦車部隊60名を動員することができました。一方、カルキスの戦力については、歩兵部隊はエレトリアに劣るものの、騎兵部隊は優勢であったとされています。

同盟関係

レラントス戦争は、多くのポリスを巻き込みました。カルキスは、スパルタ、コリントス、サモス、テッサリアなどと、エレトリアは、キクラデス諸島、メガラ、ミレトス、アイギナなどとそれぞれ同盟を結びました。これらの同盟関係は、多くの場合、貴族間の個人的な繋がりや、経済的な利害関係に基づいて形成されました。例えば、エジプトとの交易で競合するサモスとアイギナは、それぞれカルキスとエレトリアを支持し、対立しました。コリントスとメガラは、領土紛争を抱えていたため、それぞれカルキスとエレトリアを支持しました。

戦争の過程

紀元前700年頃、カルキスはエレトリアの母市であるレフカンディを破壊しました。これにより、レラントス平野におけるエレトリアの影響力は低下しました。また同時期に、エレトリアの同盟国であったミレトスがカリストスによって荒らされ、東地中海における覇権を失いました。戦争は度々中断を挟みながらも紀元前7世紀半ばまで継続し、最終的にはテッサリアの貴族クレオマコスの軍事介入により、カルキスの勝利に終わりました。

結果

カルキスの勝利に終わったレラントス戦争でしたが、長期間にわたる大規模な戦争は、エウボイア島全体を疲弊させ、衰退を招きました。経済面では、エウボイア式陶器がコリントス式陶器に取って代わられ、植民市建設においても、ミレトスなどのイオニア諸都市に後れを取りました。勝利したカルキスも、長い衰退期に入り、かつてエレトリアの支配下にあったキクラデス諸島は独立を果たしました。紀元前6世紀頃、両者は再びレラントス平野を巡って争いましたが、紀元前506年にアテーナイが平野内部に植民市を建設したことで、カルキスは支配権を失いました。エレトリアは、イオニア諸都市の反乱を支援したことが原因で、紀元前490年にペルシアによって破壊されました。

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