レンズはさぐる

1972年 4月6日から1978年 3月17日にかけて、NHK総合テレビジョンで放送された子ども向けの科学教育番組が『レンズはさぐる』です。約6年間の放送期間中に、全238回が制作・放送されました。この番組は、それ以前に放送されていた同じ子ども向け科学番組『四つの目』の後継として企画され、さらにその後、大人向けの科学番組『ウルトラアイ』へと発展していく、日本のテレビにおける科学教育番組の重要な流れの中に位置づけられています。

番組の内容とコンセプト

『レンズはさぐる』は、子どもたちが日常生活の中で見過ごしがちな現象や、科学の原理、自然の不思議に目を向け、探求する心や考える力を育むことを目的としていました。毎回さまざまなテーマを取り上げ、身近なものを題材にしたり、簡単な実験を取り入れたりすることで、科学の面白さや探求の楽しさを分かりやすく伝えようと試みました。

番組が放送されていた時期には、出版社・学研から刊行されていた子ども向けの学習図書シリーズ「ジュニアチャンピオンコース」の一環として、番組と同じタイトルの書籍「レンズはさぐる」が出版されており、テレビ番組と書籍が連携したメディア展開も行われていました。

放送時間の変化

『レンズはさぐる』の放送時間は、番組の歴史の中で何度か変更されています。

1972年4月～1973年3月: 毎週木曜日午後6時20分～午後6時45分（25分）
1973年4月～1976年3月: 毎週金曜日午後6時5分～午後6時30分（25分）
1976年4月～1977年3月: 毎週金曜日午後6時5分～午後6時25分（20分）
1977年4月～1978年3月: 毎週金曜日午後6時20分～午後6時40分（20分）

レギュラー放送の他に、年末年始や学校の長期休暇中の特別編成時には放送が休止されることもありました。特に、1975年以降の夏休み期間には、一度も番組が放送されなかったという記録も残っています。

番組を支えた人々

『レンズはさぐる』には、子どもたちに科学の楽しさを伝えるために多くの人々が出演しました。

司会: 初代司会は、前番組『四つの目』で「デカ」としてVTR出演していた大宮悌二氏が担当しました。その後、コメディアンでありパフォーマーでもあった早野凡平氏が二代目司会として、番組に新たな風を吹き込みました。
アシスタント: 水沢有美氏、藤江喜幸氏、末次美沙緒氏、赤津進氏、松岡洋子氏、山下美知枝氏など、複数のアシスタントが歴代で出演し、司会をサポートしました。
科学解説: 科学的な専門知識に基づいた解説は、前番組『四つの目』から引き続き、科学ジャーナリストの草下英明氏が担当し、難解になりがちな内容を分かりやすく解説しました。
ナレーション: 番組の進行や解説のナレーションは、小林恭治氏が担当しました。小林氏は、『四つの目』や、後継番組『ウルトラアイ』でもナレーションを務めており、この系統の科学番組における「声」として視聴者に親しまれました。

現存する映像資料について

残念ながら、『レンズはさぐる』の放送当時のマスターテープは高価であったため、再利用（上書き録画）されることが多く、長らくNHKアーカイブスには一本も映像が残されていない状態でした。これは、当時の多くの番組に共通する課題でした。

しかし、その後の「番組発掘プロジェクト」などの取り組みにより、少しずつ映像が発見されています。これまでに、視聴者から提供された1974年10月11日放送の「わな」という回の映像が発掘され、NHKアーカイブスに保存されました。さらに、二代目司会を務めた早野凡平氏のご子息である松本晋一氏からは、非常に貴重な57回分のビデオテープが寄贈され、現存する映像資料は大きく増加しました。

NHKでは現在も、番組関係者やかつての視聴者に対し、録画されたビデオテープなどの情報提供を広く呼びかけており、失われた番組の記録を一つでも多く取り戻そうとする活動が続けられています。

まとめ

『レンズはさぐる』は、1970年代に子どもたちの科学への興味と探求心を育む役割を担った、教育的意義の高い番組でした。放送時間の変遷や、映像資料の現存状況に課題はありますが、関係者や視聴者の努力によって一部の貴重な記録が残り、日本のテレビにおける科学教育の歴史を語る上で欠かせない存在となっています。

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