レンバッハハウス美術館

レンバッハハウス美術館は、ドイツ・ミュンヘンにある美術館で、その歴史は19世紀に遡ります。元々は肖像画家であり美術収集家でもあったフランツ・フォン・レンバッハの邸宅兼アトリエとして使用されていた建物を改装し、美術館として開館しました。建物の外観は、レンバッハが好んだイタリア・ルネサンス様式を取り入れており、1889年にガブリエル・フォン・ザイドルの設計によって建てられました。1925年にミュンヘン市の所有となり、美術館として改装されましたが、庭に面した部屋には、かつての邸宅の雰囲気が残されており、レンバッハ自身の作品も展示されています。

この美術館の最大の特色は、「青騎士」派の作品を数多く収蔵している点です。このグループは、20世紀初頭にワシリー・カンディンスキーとフランツ・マルクを中心に結成された前衛美術家集団で、その後の美術界に大きな影響を与えました。カンディンスキーは、元々法律家を目指していたロシア出身の画家で、後にドイツに移住し、ミュンヘンおよびその郊外のムルナウを拠点に制作活動を展開しました。「青騎士」派には、他にアウグスト・マッケ、アレクセイ・フォン・ヤウレンスキー、ガブリエーレ・ミュンターなどが所属していました。

特に、ガブリエーレ・ミュンターが1957年に寄贈した「青騎士」派の絵画は、200点以上のカンディンスキー作品を含む貴重なコレクションです。レンバッハハウス美術館は、これらの収蔵品を展示するだけでなく、ミュンヘン市立美術館として、さまざまなテーマの特別展も積極的に開催しています。

美術館は2013年にイギリス人建築家ノーマン・フォースターによる増築を経てリニューアルオープンし、歴史的建造物と現代建築が見事に融合した空間となっています。収蔵品は「青騎士」派の作品に加え、ヨーゼフ・ボイスのコレクション、メディア芸術コレクション、そしてゲルハルト・リヒターなどの1945年以降の芸術作品も含まれており、幅広い時代とジャンルの美術を楽しむことができます。

主な収蔵品には、カンディンスキーの『夜』（1906年 - 1907年）、『青い山』（1909年頃）、『ロマンティックな風景』（1911年）、マルクの『虎』（1912年）、『雨の中』（1912年）などがあります。これらの作品は、20世紀初頭の美術動向を示す重要な資料であると同時に、観る者に深い感動を与えます。

レンバッハハウス美術館は、美術史における重要な作品を鑑賞できるだけでなく、歴史的建造物と現代建築が融合した美しい空間も楽しめる場所です。美術館の庭に面した部屋には、邸宅だった頃の雰囲気が残っており、静かに美術鑑賞を楽しむことができます。ミュンヘンを訪れる際には、ぜひ立ち寄りたい美術館の一つです。

主な収蔵品
カンディンスキー『夜』（1906年 - 1907年）
カンディンスキー『青い山』（1909年頃）
カンディンスキー『ロマンティックな風景』（1911年）
マルク『虎』（1912年）
* マルク『雨の中』（1912年）

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