レ・リタ・ミツコ

レ・リタ・ミツコ（Les Rita Mitsouko）

フランスの音楽シーンにおいて、独自の存在感を放ったポップ・ロック・デュオ、レ・リタ・ミツコは、ギタリストのフレッド・シシャン（Fred Chichin）と、パワフルなヴォーカリスト、カトリーヌ・ランジェ（Catherine Ringer）という個性的な二人組によって構成されていました。

結成と名の由来

1980年にフランスの首都パリで産声を上げた彼らは、すぐにそのユニークな音楽性とヴィジュアルで注目を集めます。グループ名の「レ・リタ・ミツコ」は、往年のハリウッド女優リタ・ヘイワースと、ゲランの著名なフレグランス「ミツコ」を組み合わせたもので、彼らのアート志向と遊び心を表していました。

飛躍的な成功

彼らのキャリアにおける大きな転機となったのは、1984年にリリースされたデビューアルバム『リタ・ミツコ』です。この作品は、当時の西ドイツを代表する音楽プロデューサー、コニー・プランク（Conny Plank）の手により制作されました。特にこのアルバムに収録された楽曲「Marcia Baila」は、ヨーロッパを中心に大ヒットを記録。その斬新なサウンドとカトリーヌの奔放なパフォーマンスは多くのリスナーを魅了し、レ・リタ・ミツコの名前は一躍世界的に知られることになります。

続くセカンドアルバム『ザ・ノー・コンプレンド』（1986年）とサードアルバム『マーク&ロバート』（1988年）では、デヴィッド・ボウイやT. Rex等との仕事で知られるアメリカ合衆国の名プロデューサー、トニー・ヴィスコンティ（Tony Visconti）がプロデュースを担当。これにより、彼らのサウンドはさらに洗練され、アメリカ市場でも一層の成功を収めました。

多分野での活動

レ・リタ・ミツコの活動は音楽の領域に留まりませんでした。1987年には、ヌーヴェルヴァーグの旗手ジャン＝リュック・ゴダール（Jean-Luc Godard）監督の映画『右側に気をつけろ (Soigne Ta Droite)』において、セカンドアルバム『ザ・ノー・コンプレンド』のレコーディング風景がフィーチャーされるなど、彼らの独特な世界観は映像作家をも惹きつけました。

活動の終焉

その後も、彼らはコンスタントに質の高い作品を生み出し続け、独自のスタイルを追求しました。しかし、2007年11月28日、ギタリストであり作曲の核でもあったフレッド・シシャンが癌のため逝去。これにより、約四半世紀にわたるレ・リタ・ミツコの輝かしい活動は惜しまれつつ終焉を迎えました。フレッドの死後も、カトリーヌ・ランジェはソロアーティストとして活動を続けています。

ディスコグラフィ

レ・リタ・ミツコは、スタジオアルバム、ライブアルバム、コンピレーションなど、多岐にわたる作品を残しています。

スタジオ・アルバム

『リタ・ミツコ』 (Rita Mitsouko) (1984年, Virgin Records SA)
『ザ・ノー・コンプレンド』 (The No Comprendo) (1986年, Virgin Records SA)
『マーク&ロバート』 (Marc & Robert) (1988年, Virgin Records SA)
『システムD』 (Système D) (1993年, Delabel)
Cool Frénésie (2000年, Delabel)
La Femme Trombone (2002年, Virgin Records SA)
Variéty (2007年, Because Music)

ライブ・アルバム

『アコースティック』 (Acoustiques) (1996年, Delabel) ※M6・テレヴァイズド・コンサートより
En concert avec l'Orchestre Lamoureux (2004年, Virgin Records SA) ※オーケストラとの共演名義
Chante Les Rita Mitsouko and more à la Cigalle (2008年, Because Music) ※カトリーヌ・ランジェ名義

EP

The Eye, More Variety (2007年, Because Music)
Variety Remixes (2007年, Because Music)

コンピレーション・アルバム

『ベスト・オブ・ダンス・リミックス』 (Re) (1990年, Virgin Records SA) ※リミックス集
Bestov (2001年, Delabel)
Essentiel (2004年, Virgin, EMI)
『ベスト・オブ』 (Best Of) (2019年, Because Music)

レ・リタ・ミツコは、その実験的なサウンドと視覚的な魅力で、フランス国内外の音楽シーンに確かな足跡を残しました。彼らの音楽は今なお多くのファンに愛され続けています。

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