レーニン賞

ソビエト連邦最高の栄誉を称える賞

レーニン賞（ロシア語: Ленинская премия）は、かつて存在したソビエト社会主義共和国連邦において、国家が個人に授与する最高位の栄誉ある賞の一つでした。この賞は、科学、文学、芸術、建築、技術といった多岐にわたる分野で顕著な功績を挙げた個人を顕彰するために設立されました。

歴史的経緯と変遷

レーニン賞は、1925年 6月23日に制定されました。制定当初は、ウラジーミル・レーニンの功績を称え、彼の名を冠するにふさわしい傑出した業績に対して授与されていました。しかし、この最初の期間は長く続かず、1934年をもって授与が一旦停止されます。

1935年から1956年にかけての期間は、ヨシフ・スターリンがソビエト連邦の政治体制を掌握していた時代です。この間、国家最高の栄誉はスターリン国家賞（通称スターリン賞）として位置づけられ、レーニン賞の授与は行われませんでした。ソビエト連邦における最高国家賞は、このように政権の指導者の変遷と共に改廃される歴史をたどっています。

レーニン賞が復活を遂げたのは、スターリン時代の終焉後、1956年 8月15日のことでした。復活後のレーニン賞は、ソビエト連邦の崩壊が近づく1990年まで、ほぼ毎年授与されることとなります。授与式は、レーニンの誕生日である毎年4月22日に行われるのが通例でした。

授与対象と評価基準

復活後のレーニン賞は、科学、文学、芸術、建築、技術の各分野において、社会主義建設に貢献し、国内的または国際的に高い評価を得た卓越した個人に贈られました。これは、ソビエト連邦が国家を挙げてこれらの分野の発展を奨励し、その功労者を称える強い意思を示すものでした。

著名な受賞者たち

レーニン賞は、ソビエト連邦国内外から多くの著名な才能ある人々に授与されました。その中には、化学者のニコライ・デミャーノフ（1930年受賞）、物理学者のヤーコフ・ゼルドビッチ（1957年受賞）、ソ連を代表する作曲家ドミートリイ・ショスタコーヴィチ（1958年受賞）、指揮者のエフゲニー・ムラヴィンスキー（1961年受賞）といった科学・芸術分野の巨匠が含まれます。

また、文学分野では、児童文学や評論で知られるコルネイ・チュコフスキー（1962年受賞、著作『ネクラーソフの克服』に対して）、キルギス出身の作家チンギス・アイトマートフ（1963年受賞）、詩人のコンスタンチン・シーモノフ（1974年受賞）、没後授与された詩人ミハイル・スヴェトロフ（1967年受賞）らが受賞しました。パキスタンの詩人ファイズ・アハマド・ファイズも1962年に文学分野で受賞しており、国際的な受賞者も存在しました。

技術分野では、アレクサンドル・ベレズニャークがP-15ミサイルの開発により1961年に、ハノン・イザクソンが農業機械の分野で1964年に受賞しています。

芸術分野では、演劇界から俳優のイノケンティ・スモクトゥノフスキー（1965年受賞）、舞踊界からイーゴリ・モイセーエフ（1967年受賞）、彫刻家エヴゲーニイ・ヴチェーチチ（1970年受賞）などがいます。さらに、世界的に有名なチェロ奏者であり指揮者でもあるムスティスラフ・ロストロポーヴィチもこの賞を受賞しています。

これらの受賞者リストは、レーニン賞がソビエト社会主義における様々な分野の発展と文化の形成に貢献した人々に対して、国家が与える最高の栄誉であったことを物語っています。

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