ロイオー

ロイオー (古希: Ῥοιώ, Rhoiō) は、ギリシア神話に登場する女性です。その名は長母音を省略してロイオとも表記されることがあります。

彼女は、伝説的な人物であるスタピュロスとクリューソテミスという夫婦の間に生まれた子女の一人でした。彼女にはモルパディアーやパルテノスといった姉妹がおり、共に育ったと伝えられています。

ロイオーの運命が大きく変わったのは、神々の王の一柱である光輝なる神、アポローンとの出会いでした。アポローン神の愛を受けたロイオーは、やがて神の子を身籠ります。

しかし、娘が神の子を宿したことを知った父スタピュロスは、激しい怒りに駆られました。当時の価値観や家族の名誉に関わる問題であったためか、あるいは単に神との関わりに恐れを抱いたためか、その正確な理由は定かではありませんが、スタピュロスは娘を厳しく罰することを決意します。

彼はロイオーを一つの箱に閉じ込めてしまいます。そして、その箱を容赦なく海へと投げ入れ、娘を海上へと追放したのです。ロイオーは箱の中に閉じ込められたまま、波間に揺られ、行く当てもなく漂流することになりました。

箱舟はエーゲ海の波間を漂い続けました。幸いなことに、その箱は神聖な島として広く知られるデーロス島へと流れ着きました。この島は、アポローンとその双子の妹アルテミスが生まれた地として特別な意味を持つ場所でした。

デーロス島に無事漂着したロイオーは、そこで苦難の末、アポローンとの間にできた息子を出産しました。この子が後に重要な人物となるアニオスです。海上での過酷な漂流を経て、無事に島に流れ着き、そして我が子を生み落とすことができたロイオーは、その奇跡的な生還に深く驚き、神の恩寵を感じたことでしょう。

彼女は、自らを助け、そして生まれたばかりの息子に父であるアポローン神の手で育ててもらうことを願いました。ロイオーは生まれたばかりのアニオスを、その父であるアポローン神に委ねたのです。

アポローン神は息子アニオスを引き取り、自らの手で大切に養育しました。神の庇護のもと、アニオスは健やかに成長しました。さらにアポローンは、息子に特別な力、すなわち未来を見通す神聖な予言の能力を授けたと伝えられています。これは、アポローンが予言を司る神であったことと関係が深いでしょう。

やがて成長したアニオスは、彼が流れ着いた地であり、母ロイオーが彼を生んだ場所であるデーロス島において、その統治者、すなわち王となりました。神の子であり、予言能力を持つアニオスは、デーロス島の歴史において重要な役割を果たしたとされています。

このロイオーとアニオスの物語は、ディオドロスや高津春繁といった歴史家や神話研究者によって記録され、現代に伝えられています。

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