クリューソテミス

クリューソテミス

クリューソテミス（古希: Χρυσοθεμις, Khrȳsothemis）は、古代ギリシアの神話や伝承に登場する女性に与えられた名前です。長母音を省略してクリュソテミスと呼ばれることもあります。この名は「黄金の掟」あるいは「黄金の秩序」を意味すると考えられています。神話の世界には、この名を冠する複数の著名な女性が存在しており、それぞれ異なる血筋や逸話によって語り継がれています。

主な同名人物

神話においてクリューソテミスと呼ばれる女性には、主に以下の人物が知られています。

スタピュロスの妻

ミノス王の息子の一人とされるスタピュロスと結婚した女性としてのクリューソテミスがいます。彼女はスタピュロスとの間に、ロイオー、モルパディアー、そしてパルテノスという三人の娘をもうけたと伝えられています。娘たちのうちロイオーはアポローン神との間にアニュスを生んだとされ、その子孫がデロス島の王家となったという系譜に関わる人物です。

クレーテー島の神官カルマーノールの娘

クレーテー島に住んでいた神官カルマーノールの娘であるクリューソテミスも存在します。彼女は特に音楽の分野で知られています。伝説によれば、彼女は音楽競技を発明した人物であり、さらにデルポイで行われた最初の音楽競技祭典において、見事に初代の勝者となったと伝えられています。アポローン神に捧げる賛歌を歌って栄誉を得たというこの逸話は、彼女が音楽と密接な関わりを持っていたことを示唆しています。

ヘスペリデスの一人

ヘスペリデスと呼ばれる黄昏の女神たちの一柱としても、クリューソテミスが登場します。ヘスペリデスは、夜の女神ニュクスや巨神アトラスの娘たちとされることもあり、世界の西の果てにある美しい園に住んで、そこにある不死の黄金のリンゴを守る役割を担っていました。クリューソテミスは姉妹のリパラー、ステロペー、そして癒やしを司るヒュギエイアらと共に、この神秘的な園の守護者として描かれています。彼女たちが守る黄金のリンゴは、ヘラクレスの11番目の功業の目標ともなったことで有名です。

アガメムノーンとクリュタイムネーストラーの娘

ミュケーナイの強大な王アガメムノーンと、その王妃クリュタイムネーストラーの間に生まれた娘もクリューソテミスと名付けられています。彼女はトロイア戦争の英雄であるアガメムノーンの娘であり、悲劇的な運命をたどるアトレウス家の一員です。姉妹にはラーオディケーやイーピアナッサがおり、兄にはオレステースがいます。彼女はアガメムノーン家の悲劇、特に父アガメムノーンの帰還とその後のクリュタイムネーストラーによる殺害、そして兄オレステースによる母クリュタイムネーストラーへの復讐といった出来事の中で生きました。ソポクレスの悲劇『エレクトラ』にも登場し、激しい復讐心に燃える妹エレクトラとは対照的に、困難な現状に順応しようとする比較的穏やかな性格の持ち主として描かれることがあります。また、小惑星帯にある小惑星405番クリソテミス（405 Chrysothemis）は、彼女の名前にちなんで命名されています。

このように、クリューソテミスという名前は、神話の異なる文脈において複数の女性に与えられており、それぞれが独自の物語や系譜の中で語られています。これらの人物は、古代ギリシアの多様な伝承の一部を構成しています。

関連項目

* エレクトラ (ソポクレス)

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