ロイ・カー

ニュージーランド出身の傑出した数学者および物理数学者、ロイ・パトリック・カーは1934年5月16日に生まれました。

カンタベリー地方のKurowで育ったカーは、クライストチャーチの名門校セント・アンドリューズ・カレッジ在学中に数学に対する類まれな才能を発揮します。1950年の奨学金審査試験では、試験時間を誤解したために満点の半分にも満たない成績でしたが、その才能を評価され特例で奨学金を得て、ニュージーランド大学カンタベリー・カレッジ（現在のカンタベリー大学）へ進学を果たしました。

大学では、初年度から異例の3年次への飛び級を認められます。大学の規定により卒業には20歳を迎える必要があったため、その期間を利用してビリヤードとボクシングに熱中し、大学の代表選手としてライトウェルター級の試合に出場するほどでした。彼の才能を見抜いていたケンブリッジ大学出身の数学者、ウォルター・ウォリック・ソーヤーは、ボクシングによる脳への影響を案じていたと言われています。彼は2年次に修士課程を修了し、理学修士号を取得しました。

1955年、アーサー・シムズ連合王国奨学生としてイギリスへ渡り、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジの博士課程に進学しました。1960年にPh.D.を取得しますが、回顧録では、指導教官の専門が素粒子物理学だったため、自身が研究したい一般相対性理論の分野で苦労した経験を語っています。

トリニティ・カレッジでの学位取得後、博士研究員としてシラキューズ大学に赴任します。当時、アインシュタインの元同僚であるピーター・バーグマン博士が教授として在籍しており、カーは彼との親交を深めました。その後、シラキューズ大学のジョシュア・ゴールドバーグ博士の紹介により、アメリカ空軍のライト・パターソン空軍基地へ移籍し、航空学研究室の一般相対論部門で反重力の研究に従事しました。さらに、アルフレッド・シュルト博士の推薦を受けて、テキサス大学オースティン校へと籍を移します。

1963年、彼は一般相対性理論におけるアインシュタイン方程式の解の一つを発見し、これは後に彼の名にちなんで「カー解」と名付けられました。さらに1965年には、物理学者エズラ・ニューマンらと共に「カー・ニューマン解」を発見し、これらの業績は宇宙物理学の発展に顕著な貢献をもたらしました。1960年代から1970年代にかけては、ブラックホールの理解が飛躍的に進んだことから「ブラックホール黄金時代」と呼ばれており、カーはその時代における中心的な研究者の一人でした。

テキサス大学オースティン校では、1963年から1967年まで准教授を務め、1967年から1971年までは教授として教鞭を執りました。1971年にニュージーランドへ帰国し、母校であるカンタベリー大学の理学部数学・統計学科教授に就任します。その後、1983年から1993年までカンタベリー大学理学部長を、1991年から1993年までハンガリー原子力研究所(KFKI)の国際部長を兼任するなど、要職を歴任しました。1993年に学術界での活動から退き、同年、カンタベリー大学名誉教授の称号が贈られました。

2016年には、天文学分野で権威あるクラフォード賞を受賞します。同年、カンタベリー大学では3人目となる最高位の称号、特別教授の称号を授与されました。現在も、ニュージーランド王立協会フェロー、カンタベリー大学特別教授、相対論的天体物理学国際センター（I.C.R.A.Network）の招聘教授や学術院長といった職位にあります。2019年には王立協会フェローに選出されました。

主な受賞歴としては、ニュージーランド王立協会ヘクター・メダル（1982年）、ロンドン王立協会ヒューズ・メダル（1984年）、ニュージーランド王立学士院ラザフォード・メダル（1993年）、マルセル・グロスマン賞（2006年）、アルベルト・アインシュタイン・メダル（2013年）、クラフォード賞（2016年）、オスカル・クラインメダル（2020年）などがあります。

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