ロイ・ジェンキンス

ロイ・ジェンキンス：英国政治を彩った多才な人物

ロイ・ハリス・ジェンキンス（Roy Harris Jenkins, Baron Jenkins of Hillhead , 1920年11月11日 - 2003年1月5日）は、イギリスの政治家であり、著述家としても名を馳せました。労働党選出の庶民院議員として、1960年代から1970年代にかけて閣僚を歴任。その後、1977年から1981年まで欧州委員会委員長を務め、ヨーロッパ統合に大きく貢献しました。

生涯

若年期と教育

ジェンキンスは、ウェールズ南東部で鉱山労働者組合の職員の息子として生まれました。父は、後に庶民院議員を務めた人物。ジェンキンス自身は、Abersychan Comprehensive School、カーディフ大学を経て、オックスフォード大学ベリオール・カレッジで学びました。オックスフォード大学では、公共哲学・政治経済学において最上級の成績を修めました。大学時代の同期には、アンソニー・クロスランド、デニス・ヒーリー、エドワード・ヒースらがおり、特にヒーリーとは親交を深めました。第二次世界大戦中は王立砲兵部隊に従軍し、ブレッチリーパークで大尉の階級を与えられました。

政治家としてのキャリア

1945年の総選挙で落選した後、1948年の庶民院議員補欠選挙で当選し、政界入りを果たします。その後、バーミンガム・ステッチフォード選挙区から立候補し、1977年までその議席を保持しました。1964年の総選挙で成立したウィルソン政権では、航空担当国務大臣、内務大臣、財務大臣などの要職を歴任。内務大臣時代には、離婚法の緩和や劇場検閲の廃止など、社会改革を推進しました。1967年から1970年まで財務大臣を務め、ポンド切り下げ後の経済運営に手腕を発揮しました。

欧州委員会委員長

1976年の労働党党首選挙で3位に終わった後、欧州委員会委員長に指名されました。1977年から1981年まで委員長を務め、共同体の経済通貨統合を推進。1979年には欧州通貨制度が始動し、単一通貨ユーロの実現に向けた礎を築きました。

社会民主党の結成

1981年、ジェンキンスはギャング・オブ・フォーと呼ばれたデイヴィッド・オーウェン、ビル・ロジャーズ、シャーリー・ウィリアムズとともに社会民主党 (SDP) を結成しました。1982年には庶民院議員に復帰しましたが、1987年の総選挙で議席を失いました。

晩年

1987年以降は一代貴族となり、貴族院議員として政界に留まりました。また、1987年にはオックスフォード大学の総長に選出されています。1997年までは貴族院で自由民主党を率い、その後、政府任命の投票制度に関する独立委員会の委員長を務めました。2003年1月5日、心臓発作により逝去。

著述家として

ジェンキンスは、政治家として活躍する傍ら、優れた文筆家としても才能を発揮しました。ウィリアム・グラッドストンの伝記（1995年）はウィットブレッド賞を受賞。ウィンストン・チャーチルの伝記（2001年）も高い評価を受けました。彼の著作は、歴史的人物への深い洞察と、卓越した文章力によって、多くの読者を魅了しました。

ロイ・ジェンキンスは、政治家、欧州のリーダー、そして著述家として、多岐にわたる分野でその才能を発揮し、20世紀後半のイギリス社会に大きな影響を与えた人物として記憶されています。

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