ロカルノ条約

ロカルノ条約は、1925年10月にスイスのロカルノで協議が行われ、同年12月1日にロンドンで正式に調印された7つの協定の総称です。この条約は、第一次世界大戦後のヨーロッパの安全保障体制を構築する試みであり、ドイツを国際社会に復帰させる役割も担っていました。

ロカルノ条約の構成

ロカルノ条約は、以下の7つの条約で構成されています。

1. 集団安全保障条約
2. 仲裁裁判条約（4つ）
3. 相互援助条約（2つ）

これらの条約の中心となるのは、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギーの5ヶ国による地域的集団安全保障条約です。この条約は、ヴェルサイユ条約で定められたドイツとフランス、ドイツとベルギーの国境の現状維持、ラインラントにおける軍事施設の建設や兵士の駐留の禁止、ドイツ、フランス、ベルギーの相互不可侵などを規定しています。また、国際紛争の平和的解決や、これらの規定に対するイギリスとイタリアの保障も含まれています。ドイツの国際連盟への加盟は、この条約の発効条件とされていました。

ドイツとフランス、ベルギー、チェコスロヴァキア、ポーランドの間には、4つの仲裁裁判条約が締結されました。これらの条約は、紛争を仲裁裁判所または国際司法裁判所に付託すること、それでも解決しない場合は国際連盟理事会が仲裁を行うことを規定しています。

フランスとチェコスロヴァキア、フランスとポーランドの間には、相互援助条約が締結されました。これらの条約は、ドイツが締約国のいずれかに対し武力行使をした場合、もう一方の締約国は攻撃された国を支援することを規定しています。

ロカルノ条約の成立

ロカルノ条約は、国際協調外交を推進するドイツ外相シュトレーゼマンの提議によって始まりました。1925年2月9日、シュトレーゼマンはラインラント相互不可侵の案を提示しました。ルール占領の失敗後に対独協調路線に転換したフランスがこれに賛同し、ヨーロッパへの影響力を確保したいイギリスも、列強の勢力均衡の立役者となることを目論んでこの提議に乗りました。

1925年10月5日からロカルノのヴィスコンティ城で開催されたロカルノ会議の結果、10月16日に最終議定書と上記の7つの条約が成立し、12月1日にロンドンで正式に調印されました。翌1926年9月にドイツが国際連盟に加盟したことにより、条約が発効し、ドイツは国際社会への復帰を果たしました。1928年には不戦条約が締結され、1930年には連合軍がラインラントからの撤退を完了するなど、国際協調の機運が高まり、ヨーロッパに束の間の安定が訪れました。

ロカルノ条約の問題点

ロカルノ条約は、ドイツの東部国境における現状維持を保障するものではなかったため、チェコスロヴァキアやポーランドには依然として不安が残りました。また、ソ連はこれを西側列強による対ソ包囲網形成の試みと懸念し、チェコスロヴァキアと相互援助条約を結ぶなど、東方ロカルノ体制の構築に動きました。

ロカルノ条約の終焉

1929年に発生した世界恐慌は、列強の対立を激化させ、戦後秩序を揺るがしました。特に海外市場の狭いドイツは、経済回復の手段を領土拡大と植民地再分割に求めました。

1935年3月16日、ヒトラーはヴェルサイユ条約の軍備制限条項を破棄して再軍備を宣言しました。翌1936年3月7日、仏ソ相互援助条約の締結を理由としてロカルノ条約の破棄を宣言し、ラインラントへの進駐を強行しました。ヴェルサイユ条約とロカルノ条約を主軸とする安全保障体制は、ここに崩壊しました。

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