ロカ岬の海戦

ロカ岬の海戦：1703年、勇気と犠牲の物語

スペイン継承戦争下の1703年5月22日、ロカ岬沖で繰り広げられた海戦は、数に劣るオランダ艦隊が、自らの犠牲を顧みず、商船隊を護り抜いた勇敢な戦いとして歴史に刻まれています。

背景：私掠船対策としての護送船団

スペイン継承戦争において、フランスとスペイン海軍は、当時圧倒的な力を持っていた英蘭艦隊に対し、正面からの海戦を避ける戦略を採用しました。その代わりに、私掠船による通商破壊を積極的に行ったため、同盟国側は商船を護衛するための護送船団を組織する必要に迫られました。

戦闘の経過：勇敢なるオランダ艦隊の奮戦

1703年5月21日、塩、ワイン、砂糖などを積んだ110隻の英蘭商船隊が、リスボンを出発しイングランドへ向かいました。この船団を護衛したのは、レーマー・フラック大佐が指揮するオランダ艦隊。戦列艦3隻（スヘルメル、マイデルベルフ、ハーステルラント）とフリゲート2隻（ロッテルダム、ローゼンダール）からなる小規模な艦隊でした。

翌22日、船団はロカ岬付近で、アラン・エマニュエル・デ・クエットロゴン率いるフランス艦隊に遭遇します。フランス艦隊は、ヴァンクール、モナルク、エオル、オグユー、クーローヌといった大型艦5隻で構成されており、戦力差は明らかでした。

絶望的な状況下で、フラック大佐は冷静に商船隊へ退避を指示。自らはオランダ艦隊を率いて戦列を形成し、商船を保護しながらフランス艦隊との戦闘に突入しました。オランダ艦隊は、圧倒的な戦力差にも臆することなく勇敢に戦いましたが、多勢に無勢。徐々に追い詰められ、各艦が次々と降伏を余儀なくされました。

フラック大佐が座乗するマイデルベルフは、乗組員の半数が死傷するまで奮戦。フラック自身も片腕を失う重傷を負いながらも指揮を執り続けましたが、ついにメインマストが折れ、船が沈没を始めたため降伏を決意しました。生き残った乗組員は船を脱出し、マイデルベルフは炎に包まれながら沈没しました。

戦いの結末：英雄の犠牲と商船隊の脱出

フラック大佐率いるオランダ艦隊の決死の抵抗により、商船隊は無事に逃走することができました。このおかげで、大同盟側の損害は最小限に抑えられました。フラック大佐は、残りの4隻の艦とともにフランスのトゥーロンへ連行されますが、戦闘で受けた傷がもとで7月17日に亡くなりました。

ロカ岬の海戦は、数に劣る艦隊が、祖国と仲間のために勇敢に戦い、その犠牲によって勝利を掴んだ英雄的な戦いとして、歴史に語り継がれています。

参考資料

Jean-Jacques Michaud, le Coucher du Soleil, revue Navires et Histoire, numéro 39, décembre-janvier 2007.
Jean Meyer et Martine Acerra, Histoire de la marine française, Rennes, éditions Ouest-France, 1994. ISBN 2-7373-1129-2.
Michel Vergé-Franceschi (dir.), Dictionnaire d'Histoire maritime, éditions Robert Laffont, coll. « Bouquins », 2002.
Guy Le Moing, Les 600 plus grandes batailles navales de l'Histoire, Rennes, Marines Éditions, 2011. ISBN 9782357430778.

もう一度検索