ロケットマン (水木しげるの漫画)

『ロケットマン』

『ロケットマン』は、漫画家・水木しげるのデビュー作であり、貸本漫画として1958年に兎月書房から刊行されました。本作は、水木しげるが紙芝居作家から漫画家へと転身するきっかけとなった作品で、その後の彼の作風を特徴づける要素が随所に見て取れます。漫画評論家の梶井純は、その展開の面白さを「無茶苦茶」と評し、貸本漫画の処女作の中でも群を抜いていると評価しています。

概要

紙芝居作家として活動していた水木しげるは、紙芝居業界の衰退を機に貸本漫画家への転進を決意しました。1957年秋頃から約2ヶ月をかけて『ロケットマン』を制作し、表紙を加太こうじが担当しました。1958年2月25日に貸本単行本として刊行され、水木しげるの漫画家としてのキャリアがスタートしました。なお、水木しげるはデビュー前に宮健児の貸本漫画『赤電話』の完成に協力しており、この作品を処女作、『ロケットマン』をデビュー作として区別する場合もあります。

『ロケットマン』は、デビュー作でありながら、水木しげるらしさが強く表れている作品です。後の作品で用いられる設定や要素も既に本作に登場しており、水木漫画の原点として重要な作品と言えるでしょう。本作は、中野書店が1980年12月に『水木しげる初期作品集』として復刻したほか、講談社や小学館クリエイティブからも再復刻されています。特に、小学館クリエイティブから刊行された『ロケットマン 限定版BOX』は、一般の書店でも購入できるようになり、より多くの読者に本作が知られるきっかけとなりました。

あらすじ

物語は、夜空に現れた「第二の月」の調査のため、上津戸博士がロケットで宇宙へ出発するところから始まります。しかし、悪の科学者である怒雷博士の陰謀によってロケットは墜落し、上津戸博士は海に沈められてしまいます。しかし、墜落前に宇宙で謎の生物と接触していた上津戸博士は、怪物「グラヤ」として復活を遂げ、怒雷博士が開発したロボット「ネオドライ」と激しい戦いを繰り広げます。さらに、物語の終盤には謎のヒーロー「ロケットマン」が登場し、怒雷博士を追い詰めていきます。最終的にロケットマンは全てを解決し、新首相になります。

主な登場人物

上津戸新一（うえつとしんいち）: 上津戸博士の息子で、ひょうたんの研究をしている学生。父の失踪をきっかけに事件に関わることになります。
上津戸博士（うえつとはかせ）: 日本初のノーベル賞科学者。宇宙で謎の生物に寄生され、怪物「グラヤ」に変貌します。
怒雷博士（どらいはかせ）: 世界征服を企む悪の科学者。ロボット「ネオドライ」を開発し、その力で首相の座を奪おうとします。
ロケットマン: 物語終盤に登場する謎のヒーロー。圧倒的な力で怒雷博士を打ち破り、新首相に就任します。

単行本

『ロケットマン 限定版BOX』（小学館クリエイティブ、2010年11月、ISBN 978-4-7780-3154-1）
『貸本漫画集(1) ロケットマン他』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2013年9月、ISBN 978-4-06-377501-3）

参考文献

山口信二『水木しげる貸本漫画のすべて』YMブックス、2007年5月。ISBN 978-4-903548-08-1。

外部リンク

伝統のデビュー作品特集！素晴らしき哉デビュー！ - 小学館クリエイティブ

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