ロシアかぜ

ロシアかぜについて

ロシアかぜまたはアジアかぜは、1889年から1890年にかけて広範囲にわたって流行した呼吸器感染症です。この大流行は、ロシア帝国の中央アジアで最初に発生し、やがて世界中に広がりました。最終的には、当時の世界人口のうち約100万人がこの病気で命を落としたとされています。

発生と拡大

ロシアかぜは1889年の5月、ブハラで初めて観測されました。同月には、カナダのアサバスカやグリーンランドでも感染が確認されており、その後の展開は驚異的でした。特に、10月にはロシアのサンクトペテルブルクで患者が現れると、短期間のうちにヨーロッパ全域やアメリカにまで感染が拡大しました。わずか4ヶ月で地球を一周したという点からも、その感染のスピードは現代のパンデミックと同等といえるでしょう。

日本は1890年に流行し、一般には「お染かぜ」という俗称で知られるようになりました。これは、当時の流行劇『お染久松』に由来しており、感染防止のための紙札が流行したことからも、国民の間での認識の広がりが伺えます。

特徴と影響

この感染症の特徴として、高齢者における致死率の高さが挙げられます。また、神経症状が目立つことも通常のインフルエンザ感染とは異なる点です。致死率は0.1%から0.28%、あるいは1%というさまざまな見解があります。

当時のウイルス学は未発達であったため、ロシアかぜの原因となるウイルスは特定されませんでしたが、インフルエンザ菌なる病原体が分離されたものの、後にその直接的な関与が否定されました。また、一部の研究者はこの感染症がH2N2亜型やH3N8亜型といったA型インフルエンザウイルス、さらにはヒトコロナウイルスOC43と関連がある可能性を示唆しています。

興味深いことに、ロシアかぜの症状は新型コロナウイルス感染症（COVID-19）とも共通点が見られます。イギリスやドイツの診療記録に残る味覚や嗅覚の消失、さらには倦怠感や集中力の低下といった後遺症が、COVID-19およびその後遺症（Long COVID）と似通っていることが指摘されています。

結論

ロシアかぜは19世紀の最後の大規模なパンデミックとして歴史に刻まれ、多くの人々に影響を与えました。このパンデミックの研究は、感染症の理解を深める手助けとなっており、現在の医学や公共衛生の観点からも重要です。

関連項目

• - 感染症の歴史
• - スペインかぜ
• - アジアかぜ
• - 新型コロナウイルス感染症の世界的流行 (2019年-)

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