ロシアによるヘルソン州占領

2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、ヘルソン州にも大きな影響を与えました。3月2日には州都ヘルソン市がロシア軍に占領され、軍事占領が開始されました。この占領は、ウクライナ南部攻勢の一環として行われ、ヘルソン州の大部分がロシア軍の支配下に入りました。ヘルソンは、侵攻開始後ロシア軍が制圧した唯一の州都です。

ロシアによる占領体制

占領初期、ロシアは「ヘルソン軍民行政府」と呼ばれる体制を敷き、後に併合を経て「ヘルソン州」と改称しました。ロシアはヘルソン州を併合する意向を表明し、2022年9月には住民投票を実施しました。9月30日にはヘルソン州の一部を含む地域を併合したと宣言し、さらにムィコラーイウ州の一部もヘルソン州に編入しました。しかし、これらの行為は国際法違反として国際社会から非難され、国連総会ではロシアの決定を撤回し、軍を撤退させるよう求める決議が採択されました。

ヘルソン市の解放

2022年10月19日、ロシアの行政機関はヘルソン市からドニエプル川左岸に移動し、11月9日にはロシア軍がヘルソン市から撤退しました。11月11日にはヘルソン市が解放され、占領されていた地域からウクライナ軍が奪還を果たしました。しかし、ヘルソン州の一部地域は依然としてロシアの占領下にあり、ロシアはこれらの地域に対する主張を続けています。

占領下の状況

ロシア軍はヘルソン占領直後、秩序維持のため市行政官との協議を進め、ウクライナ国旗の掲揚を認める一方で、市民の行動を制限しました。外出は日中のみ、集会は禁止、車両は食料や医薬品の輸送に限り許可されました。占領初期には、北クリミア運河の封鎖が解除され、クリミアへの水の供給が再開されました。

占領下では、ロシア兵によるレイプや殺害といった人道的な問題も発生しました。一方で、ヘルソン州知事はそのような報告を否定しました。

軍民行政府の設置

4月に入ると、ヘルソン州にはロシア国旗が掲げられるようになり、ロシアは新政権を樹立しました。4月25日には、ロシア軍がヘルソン市議会の建物を制圧し、元KGB職員を新市長に任命しました。ロシアは通貨をルーブルに切り替え、ロシア語話者に対する差別を主張しました。また、ヘルソン地域から穀物や農業機械をロシアに輸送し、ウクライナ政府はこれを「ホロドモール」の再来だと非難しました。

ロシアの併合とその後

ロシアはヘルソン州のロシア連邦への加盟を表明しましたが、この問題に関する住民投票は行われませんでした。また、ロシアはヘルソンからの穀物輸出を開始しました。EUは、ヘルソン地域で発行されたロシアのパスポートを認めないことを表明しました。

ヘルソン州では、2022年のロシアの戦争検閲法が適用され、違反者にはロシアへの強制送還が科せられました。また、ヘルソン州政府の幹部が殺害される事件も発生しました。

行政区画

ロシア占領当局は、ヘルソン軍民行政府を5つの地区、49の地方自治体に分割しました。しかし、実際にはウクライナの行政区画を維持する形となりました。

民間人への影響

ロシア占領下では、民間人に対する拷問、拉致、虐待が報告されました。目撃者は、恣意的な捜索、拘留、拉致を証言し、拷問の具体的な事例も報告されています。人権団体も、ロシア軍による拷問と失踪を報告しています。

占領への抵抗

占領下のヘルソンでは、住民による抵抗運動が活発に行われました。集会やデモが行われ、ウクライナ国旗が掲げられました。ロシア軍は抗議者に対して発砲し、多数の死傷者が出ました。また、ウクライナのパルチザンによる親ロシア派の殺害事件も発生しました。

ウクライナの反攻

ウクライナ軍は2022年4月から反攻を開始し、ヘルソン周辺の複数の集落を解放しました。7月には、アントノフスキー橋がHIMARSによる攻撃で破壊されました。11月にはヘルソン市が解放され、ロシア軍は撤退しました。しかし、ヘルソン州の一部地域は依然としてロシアの占領下にあります。

まとめ

ロシアによるヘルソン州占領は、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻の重要な局面です。占領下では、民間人に対する人道的な問題、軍民行政府の設置、住民の抵抗、そしてウクライナ軍の反攻など、様々な出来事が起こりました。ヘルソン市は解放されましたが、現在も一部地域は占領下にあり、ウクライナの領土問題は継続しています。

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