ロシアの戒厳令 (2022年)

ロシアの戒厳令（2022年）

2022年10月20日、ロシアはウクライナ侵攻の最中に戒厳令を発令しました。これは、動員開始から約1ヶ月後の出来事であり、ウラジーミル・プーチン大統領が二つの大統領令に署名したことによって実行に移されました。

大統領令の内容

一つ目の大統領令は、「ドネツク人民共和国（DPR）、ルガンスク人民共和国（LPR）、ザポリージャ州、ヘルソン州における戒厳令の導入について」というもので、これらロシアが一方的に併合したウクライナ4州に戒厳令を完全に適用するものでした。二つ目の大統領令は、「2022年10月19日付けのロシア連邦大統領令第756号に関連して、ロシア連邦の構成主体において講じられる措置について」というもので、ロシア国内の各地域に異なるレベルの対応措置を適用するものでした。

各地域への適用レベル

戒厳令の適用レベルは以下の通りです。

完全適用: ロシアが併合したウクライナ4州
中程度の対応レベル: クリミア半島と国境地域
高度な準備レベル: 中部および南部の連邦管区
基本準備レベル: その他の連邦構成主体

ロシア当局は、戒厳令の発令によって、人々の生命や移動の自由を制限するような措置は計画されていないと説明しています。

歴史的背景

この戒厳令は、現代ロシア史上初の出来事です。過去にロシア国内で戒厳令が発令されたのは、第二次世界大戦中の1943年5月、ソビエト連邦時代のものです。そのため、今回の戒厳令は、ロシアにとって異例の措置と言えます。

法改正

戒厳令の発令に先立ち、10月20日にはロシア国家院で、刑法に戒厳令と戦時の概念を盛り込む改正法案が全会一致で可決されました。この改正によって、戒厳令下や戦時中の命令に違反した場合の罰則も導入されました。これにより、戒厳令の実効性が担保されることになりました。

法令の記述

主要な法令のパラグラフNo.3には、「必要な場合、ロシア連邦において、戒厳令期間中に、2002年1月30日付の連邦憲法法律第1-FKZ号『戒厳令について』に定められたその他の措置を適用することができる」と記述されています。これは、戒厳令下で必要に応じて追加の措置が講じられる可能性を示唆しています。

関係者の反応

大統領令が発せられた直後、ロシア大統領報道官ドミトリー・ペスコフは、国境を閉鎖する計画はないと明言しました。また、ロシア連邦安全保障会議書記ニコライ・パトルシェフは、移民管理と滞在規則に違反した外国人に対する責任を強化する方針を示しました。

モスクワ市長セルゲイ・ソビャーニンをはじめ、クルスク州やヴォロネジ州の当局者も、人々の生命や移動の自由を制限するような措置は導入しないと発表しています。

これらの声明から、ロシア政府は戒厳令下でも、人々の日常生活への影響を最小限に抑える意図があることが伺えます。しかしながら、戒厳令という制度自体が、国民生活に影響を与える可能性を秘めていることは否定できません。

参考文献

Decree on the introduction of martial law in the territories of the DPR, LPR, Zaporozhye and Kherson Oblasts
Decree "On measures taken in the constituent entities of the Russian Federation in connection with the Decree of the President of the Russian Federation of October 19, 2022 No. 756"

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