ロシアはウクライナに対して何をすべきか

2022年4月3日、ロシアの国営通信社RIAノーボスチに掲載されたティモフェイ・セルゲイツェフによる論説記事「ロシアはウクライナに対して何をすべきか」は、ウクライナという国家と国民的アイデンティティーの完全な破壊を求めるものでした。この記事は、ロシアによるウクライナ侵攻の最中に発表され、同日にはブチャで多数の民間人の遺体が発見されたことで、国際社会からの強い批判と怒りを招きました。

この記事の内容は、ウクライナ文化の「冷厳な検閲」、ロシアが占領した地域でのウクライナ人の「再教育」と「脱ウクライナ化」を提唱しています。セルゲイツェフは、ウクライナの民族主義を人為的なこじつけとし、国家としてのウクライナの存在を否定しています。彼は、「ウクライナ」という言葉自体を認めず、ウクライナを解体し、ロシアの直接支配下にある州に置き換えるべきだと主張しています。さらに、占領後にはウクライナ人の「自己意識の民族的要素」を排除すると述べています。

セルゲイツェフは、ウクライナの民間人の多くが「ナチス」であり、「非ナチ化」されるべきだと主張しています。彼は、ナチスの具体的な証拠がないにもかかわらず、「ウクライナのナチズムは無定形で曖昧」であると主張し、これを正当化しています。歴史家のティモシー・スナイダーは、これを「ナチズムのロシア独自の定義」と指摘しています。セルゲイツェフは、バンデラ派よりも親欧州主義が脅威だと主張し、ウクライナ人は「戦争の苦難を経験し、罪を償う」必要があり、その後「ロシア文明」に「統合」されると述べています。

この記事は、2016年にアレクサンドル・ジュチコフスキーが発表した記事の拡張版であるとの指摘もあります。ジュチコフスキーの記事では、ウクライナ人を非人間化し、「人ではなく敵と戦っている」と述べています。

記事の執筆者であるセルゲイツェフは、過去にウクライナの政治家や企業に関与しており、親プーチン政党を支持しているとされています。また、現代ロシアファシズムの思想家の一人とも評されています。

この記事に対する反応は、国内外で大きなものとなりました。ロシアのドミトリー・メドベージェフは、この記事の内容を繰り返し、ウクライナをナチス国家と見なし、国家として「根絶」されるべきだと主張しました。一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、この記事をウクライナ人大量虐殺計画の証拠であると述べ、国際刑事裁判所への訴追を求めました。また、各国の政治家や専門家もこの記事を批判し、「ファシズム」と評したり、ウクライナ人を殺害するための「ライセンス」だと指摘したりしました。

ドイツでは、連邦議会議員がジェノサイドの防止と処罰に関する条約違反の疑いでセルゲイツェフを告訴し、ウクライナでも公判前調査が開始されました。専門家は、この記事がロシアのプロパガンダの危険な発展を示し、「ウクライナ人虐殺の青写真」であると指摘しています。歴史家のスナイダーは、この記事がロシアによる大量虐殺の意図を明らかにしたと主張し、スラヴォイ・ジジェクは、ロシアがウクライナ人を「解散させ、別の者を選ぶ」ことを計画していると批判しました。

この記事は、ロシアによるウクライナ侵攻におけるプロパガンダの重要な事例として、国際社会から強い非難を浴びています。

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