ロジェ・マルタン・デュ・ガール

ロジェ・マルタン・デュ・ガールについて

ロジェ・マルタン・デュ・ガール（Roger Martin du Gard、1881年 - 1958年）は、フランスの小説家及び劇作家であり、彼の代表作『チボー家の人々』によってノーベル文学賞を受賞したことで知られています。デュ・ガールの作品は、深い人間探求や社会に対する鋭い考察が特徴であり、その文学的な影響は現在にも及んでいます。

生涯と経歴

デュ・ガールはパリの郊外、ヌイイ＝シュル＝セーヌで法曹に従事するブルジョワの家庭に生まれました。彼の父は裁判所の代訴人であり、そんな家庭環境で育ったデュ・ガールは、教育においても恵まれた背景を持ちました。フェヌロン中学やコンドルセ高等中学校で学ぶ中、同級生には後に彼の文学的未来に影響を与える重要な作家たちがいました。

17歳でレフ・トルストイの『戦争と平和』を読み、文学への興味を深めます。その後、ソルボンヌ大学の文学部へ進学しますが、卒業試験に失敗し、フランス国立古文書学校へ転校して考証学を学びます。1905年に卒業後、彼は1906年にエレーヌ・フーコーと結婚し、翌年には一女を授かりました。この頃から彼の執筆活動が本格化します。

デュ・ガールの初めての小説『生成』は、自費出版されたもので、若者の内心的苦悩を描き日々の生活の中での葛藤を表現しました。1913年には『ジャン・バロワ』を発表し、これが彼の名声を確立するきっかけとなります。この作品では、ドレフュス事件を背景にした精神的な葛藤が描かれ、多くの読者に深い感銘を与えました。

第一次世界大戦が始まると、デュ・ガールは自動車輸送班員として従軍しました。この体験が彼の作品に影響を与えたことは間違いありません。1920年から1940年にかけて、彼は地方に住みながら大作『チボー家の人々』の執筆に取り組みます。この作品は、フランスのブルジョワ社会における精神的な風土や思想の摩擦を描いた大河小説として評価され、部分的にしか発表されなかったにもかかわらず、彼の文学的地位を揺るぎないものにしました。

1937年には『チボー家の人々 第7部 1914年夏』がノーベル文学賞を受賞し、彼はその名を広めます。しかし、戦後彼は移動生活を余儀なくされ、ナチスの占拠により自宅を失うなど困難な時期を過ごします。1955年には回想録を取り入れた全集が出版され、彼の文学の集大成として世に出ました。

性的傾向と遺産

デュ・ガールは自身の同性愛の傾向についても公にしていました。彼の戯曲『無口な男』は、好評を博しつつも批判の的となりました。1958年に心筋炎で亡くなるまで、彼は精力的に執筆を続けました。

デュ・ガールの遺産は、後にパリ国立図書館に保存された未完の『モーモール大佐』の草稿や日記・書簡を通じて更に広がっています。生涯を通じて、多くの作品を残し続けた彼は、フランス文学の重要な人物とし続けられています。彼の作品や考え方は、時代を超えて人々に影響を与え、その文学的美しさと深さは今なお多くの読者に愛され続けています。

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