ロジャーノミクス

ロジャーノミクス

ロジャーノミクスとは、1980年代にニュージーランドで実施された一連の経済政策のことを指します。この政策の中心となったのは、当時の財務大臣ロジャー・ダグラスで、彼の名前が冠されています。この政策は、アメリカ合衆国のレーガノミクス、イギリスのサッチャリズムと共に、20世紀後半における代表的な経済政策の一つとされています。

誕生の背景

ロジャーノミクスが生まれる背景には、ニュージーランドが直面していた深刻な経済危機があります。1932年のオタワ協定により、ニュージーランドはイギリス市場を中心に農産品の輸出を成功させ、国民生活は安定した状態にありました。しかし、1970年代にイギリスが欧州共同体に加盟したことでその特権的地位は失われ、輸出産業が縮小。さらにオイルショックの影響で貿易収支が悪化し、経済は危機的状況に陥りました。この状況を打開しようとした当時の首相ロバート・マルドゥーンは公共投資に頼る政策を進めますが、効果は薄く、1970年代末には財政赤字が急増し、国民の生活水準は低下する一方でした。

政策の発表と内容

1984年、デビッド・ロンギが率いる第4期ニュージーランド労働党政権が発足し、ロジャー・ダグラスを財務大臣に任命します。彼は自由主義経済の理念に基づき、政府の役割を縮小し、市場開放を進めることを決定しました。この改革は、伝統的な労働党の政策からは逸脱したものでありましたが、当時の経済状況を踏まえ、迅速に実行されることとなります。

具体的な改革の内容には、変動為替相場への移行、規制の緩和および撤廃、補助金の廃止、海外投資の自由化、保護貿易政策の撤廃などが含まれます。また、富裕層に向けた減税を実施し、財政を安定化させるために物品サービス税（GST）の導入も図られました。同時に、年金や医療関連の予算削減も行われ、政府支出の徹底的な削減が求められました。

行政改革と影響

ロジャーノミクスは経済改革だけでなく、行政制度にも改革が及びました。政府機関の構造改革や公共サービスの民営化が進められ、運輸省などの官庁は大幅にリストラされました。このような改革により、官庁は効率的に運営されるようになった反面、失業者の増加や企業倒産の連鎖を引き起こす要因ともなりました。

加えて、改革の進行中には海外への人材流出や貧富の格差が拡大し、国民生活には多くの痛みをもたらしました。しかし、実施の結果、財政的には徐々に持ち直し、インフレーションが抑制されていきました。これを受けて、1987年の総選挙ではロンギ政権が再選されます。

その後の展開

1987年以降、ロジャーノミクスはさらに進化しましたが、ブラック・マンデーの影響により再び経済が後退します。この時期には党内での政治的混乱が生じ、ロンギ首相は辞任、後任にはジェフリ・パルマーが就任しました。1990年の総選挙では、保守派のジム・ボルジャーが勝ち、新たな政権が誕生しましたが、ボルジャー政権もロジャーノミクスの基本方針は維持しつつも、政策の修正が求められました。

評価と影響

ロジャーノミクスはその後のニュージーランドに多くの影響を与えました。経済的には国際競争力が高まり、規制緩和によってサービス向上が図られましたが、一方で高失業率や経済的不安定、社会格差など、多くの社会問題を抱えることとなりました。特に、専門職を担う人材が海外へ流出する現象が今後の国家運営に影響を及ぼす問題として指摘されています。

一方で、巨額の国有資産が民営化されたことにより、国民の支持は強くはありませんでしたが、後続の政権でもロジャーノミクスの成果や教訓が引き継がれ続けました。ダグラスはその政策と他国の政策との違いを強調し、現在でもロジャーノミクスの影響は各方面で語られています。

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