ロジャー・フェントン

ロジャー・フェントンの生涯と業績

ロジャー・フェントン（1819年3月28日 - 1869年8月8日）は、イギリスの写真家として戦争写真の先駆者の一人として広く認識されています。彼の活動は、戦争の現実を視覚的に捉える重要なステップをもたらしました。ここでは彼の生い立ち、クリミア戦争での活動、そして晩年における仕事を振り返ります。

若年期と教育

フェントンはランカシャー州ヘイウッドにて7人の子供のうちの4番目として誕生しました。父は銀行家で、政治にも携わっていました。フェントンはロンドン大学で英語や数学などを学び、1840年に優秀な成績で卒業しました。その後、法学を学びながら絵画への関心を高め、1843年にはパリへ渡り絵画を学びました。この時期、彼の芸術への情熱は高まり、1847年までには法律の資格も取得しました。

写真との出会い

1851年、フェントンはロンドンの万国博覧会で初めて写真に触れ、その魅力に取り憑かれました。その後、パリでカロタイプを学び、1852年のロイヤル・アカデミーで初の写真展に参加しました。フェントンは、1853年に写真協会を設立し、その事務局長にも就任しました。から写真は、社会のさまざまな瞬間を切り取る手段として重要性を増していきました。

クリミア戦争の影響

1854年のクリミア戦争勃発時、フェントンはその様子を撮影するよう依頼されました。出版社の支援を受け、彼は戦場に赴き、写真を撮影しました。彼は、戦争の厳しさと人々の苦しみを強調することよりも、あえて美しさや勇気を伝える写真を優先しました。特に、負傷兵や死体ではなく、戦場で奮闘する女性や風景を多く撮影しました。

「死の陰の谷」という有名な写真は、クリミア戦争を象徴するものであり、彼の作風を代表する作品の一つです。フェントンは850枚以上の写真を撮影し、312枚がイギリス各地で展覧されましたが、商業的には成功を収めることはできませんでした。

戦争後の活動

戦争が終わると、フェントンはイギリス各地を旅して自然や静物の写真を撮影しました。しかし、次第に商業写真家と呼ばれる人々に対して批判的になり、自身のアートを安売りすることに対する抵抗感を抱いていました。彼は商業写真家たちとの対立を抱えつつも、独自のスタイルや理想を貫こうとしたのです。

1858年にはウェストミンスター宮殿の写真を撮影しました。この作品は未完成のビッグ・ベンを映した唯一の写真として貴重です。

晩年と影響

1800年代の後半、フェントンは写真の制作から離れて法律の分野へ戻りました。そのため、彼の名前は次第に忘れ去られていきましたが、彼の革新的な作品は美術史家に評価され、再評価されることになります。2005年にはロンドンで開催された「19世紀の最も重要な写真家」展に90点の作品が展示され、2007年には国際写真殿堂に殿堂入りを果たします。

ロジャー・フェントンは、戦争写真のパイオニアとして、また写真芸術の発展に寄与した画期的な存在として今もなお人々に影響を与えています。彼の生涯は技術革新と芸術的追求の両方の側面を持ち、写真というメディアの可能性を広げることに寄与しました。

もう一度検索