ロスト・エモーション

『ロスト・エモーション』（原題：Equals）は、2016年に公開されたアメリカ合衆国のSFディストピア映画です。独創的な世界観は、本作で原案と監督を務めたドレイク・ドレマスによって生み出されました。脚本はネイサン・パーカーが担当し、製作総指揮には著名な映画監督であるリドリー・スコットらが名を連ねています。

本作の大きな特徴の一つは、劇中の印象的な舞台が日本の複数の場所で撮影されたことです。特に、世界的に知られる建築家・安藤忠雄氏が設計した建築物が主要なロケ地として使用されました。具体的には、長岡造形大学、狭山池博物館、淡路夢舞台国際会議場などが登場し、作品の未来的な雰囲気と独特な美しさを構築する上で重要な役割を果たしています。

あらすじ

物語の舞台は、かつて発生した大規模な世界戦争によって地上の大部分が破壊され尽くした遠い未来です。この破滅的な出来事から、人類は争いや悲劇の根源は「感情」にあるという結論に至ります。そして、二度と同じ過ちを繰り返さないために、感情を抑制する遺伝子操作を施された人間たちの共同体「イコールズ」を創造しました。

イコールズの住人は、厳格な「保健安全局」の監視のもとで生活しています。彼らにとって、愛情、喜び、悲しみ、恐怖といった感情はすべて「SOS（Switched On Syndrome）」と呼ばれる病気と見なされます。もし感情の兆候が確認された場合、それは「発症」として扱われ、該当者は容赦なく共同体から隔離され、最終的には安楽死させられるという恐ろしいシステムが敷かれています。この社会では、感情の排除によって秩序と平穏が維持されているのです。

そんな徹底的に管理された感情なき世界に生きる、デザイナーのサイラスと、秘密裏に感情を持っているニアは、互いに強く惹かれ合います。それはイコールズ社会においては最も危険で許されない「感情の発症」でした。禁断の感情に苦悩しながらも、互いへの抑えきれない思いを募らせるサイラスとニアは、この息苦しい管理社会から脱出し、未知なる外の世界へ逃れることを決意します。

登場人物・キャスト

本作に登場する主要なキャラクターと、それを演じた俳優は以下の通りです。

サイラス：ニコラス・ホルト
ニア：クリステン・スチュワート
ジョナス：ガイ・ピアース
ベス：ジャッキー・ウィーヴァー
ジョージ：トビー・ハス
レナード：デヴィッド・セルビー
アイリス：オーロラ・ペリノー
マーク：スコット・ローレンス
レイチェル：ベル・パウリー
ケイト：ケイト・リン・シール

製作と撮影

映画の製作は、2013年10月24日にニコラス・ホルトとクリステン・スチュワートの出演が初めて報じられたことから始まりました。その後、2014年6月12日にはガイ・ピアースの参加が発表され、7月にはケイト・リン・シール、オーロラ・ペリノー、ジャッキー・ウィーヴァーといった実力派キャストが加わりました。

主要な撮影期間は2014年8月4日から同年9月26日までで、前述のように日本の各地で行われました。安藤忠雄氏設計の独創的な建築物は、本作の近未来的な世界観を視覚的に表現する上で重要な要素となりました。

音楽については、2014年5月2日にアパラットが担当することが報じられ、2015年6月9日にはダスティン・オハロランも作曲チームに参加しています。

衣装デザイナーのクレジットに関する問題

本作の公開後、衣装デザインのクレジット表記を巡って一時的な論争が起こりました。クレジットではアビー・オサリヴァンとアラーナ・モーシェッドの2名が担当したことになっていましたが、オサリヴァン側が「モーシェッドは実際には衣装デザイン作業に一切関与しておらず、クレジットされるのは不当である」と訴えました。しかし、一方で「モーシェッドは登場人物の衣装選定において重要な役割を果たしていた」とする証言もあり、問題の背景は複雑でした。

公開と評価

本作はまず、2015年9月5日にイタリアで開催された第72回ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミアとして上映されました。続いて、9月13日には第40回トロント国際映画祭でも上映され、国際的な注目を集めました。同年10月16日には、アメリカの配給会社A24とDirecTVが本作の全米配給権を獲得したことが報じられ、劇場公開とビデオオンデマンド配信の両面で展開されることになりました。

映画批評家からの評価は、残念ながら全体的に厳しいものとなりました。映画批評集積サイトであるRotten Tomatoesには82件のレビューが寄せられましたが、批評家支持率は35%と低迷し、10点満点中5.08点という平均点でした。同サイトの総評では、「『ロスト・エモーション』は視覚的には目の保養となる美しさを持っている。しかし、その未来世界の映像美をもってしても、物語のありふれた内容と展開の遅さという欠点を補うには至っていない」と厳しい指摘がなされています。また、別の批評サイトMetacriticにおいても、27件のレビューに基づく加重平均値は100点満点中43点となっており、概して評価が伸び悩んでいることが分かります。

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