ロッキード L-9 オライオン

ロッキード Model 9 オライオン

ロッキードModel 9オライオン（Lockheed Model 9 Orion）は、1931年のアメリカ合衆国において製造された単発の旅客機です。この機体は、当時の軍用機よりも優れた速度を誇ることから、引き込み式降着装置を備えた初の旅客機として評価されています。また、ロッキードの航空機としては最後の木製機でもあり、当時の航空技術の革新を象徴する存在でした。

オライオンの設計に関しては、1928年から1931年までロッキードのチーフ・エンジニアを務めたジェラルド・ヴァルティーが関与しており、過去に製作された航空機の構造を継承しながら設計されています。翼や尾翼、コクピットなどの大部分の部品は、同社の以前のモデルであるアルテアを流用しており、コクピットにはヴェガの設計が使用されています。また、エンジンカウリングにはエア・エクスプレスのNACAカウリングが流用されるなど、設計の工夫が随所に見られます。

オライオンのキャビンは6人乗りの客室を備えており、1931年5月6日に型式承認を受けました。市場に出された際は旅客機としての利用が主でしたが、その優れた速度からレース機としても活躍しました。特に、1931年に開催された最初のベンディック・トロフィー・レースでは、出場した9機の中でロッキード製の航空機が6機あり、その中にオライオンが2機含まれていました。

また、1935年7月11日、女性パイロットであるローラ・インガルスはカリフォルニアのフロイドベネット空港から東海岸へ飛行し、大陸横断飛行における女性の速度記録を樹立しました。その数ヶ月後、インガルスは逆方向の記録更新にも成功しました。

さらに、オライオンの運行は1931年5月からテキサスのボーエン・エアラインズによって始まり、アメリカン・エアウェイズでもいくつかの機体が運用されました。しかし、1934年に民間航空庁が単発旅客機の運行に制約をかけ、運行には副操縦士の搭乗を求める方針を採った結果、オライオンに対する旅客機としての需要は減少しました。いくつかの事故により修理が難しく、多くの機体が廃棄される運命をたどりましたが、中にはスペイン内戦のために収集されたものもありました。

中には特殊な改造が施された機体も存在し、翼の前端にカメラを取り付ける改造機や、1935年に著名なパイロットであるウィリー・ポストとウィル・ロジャースが搭乗中にアラスカで墜落した機体もありました。オライオンの生産は合計35機に達しましたが、1940年代には1機を除いてほとんどが残存しませんでした。

最後に残った機体は、1931年に製造されたアルテアが事故後にオライオンに改造されたもので、「シェルライトニング」という名称が付けられました。これはジミー・ドーリットルの乗機としても知られ、1930年代後半には航空機レースにも参加しています。最終的には1960年代にスイス交通博物館に購入され、飛行可能な状態にリビルドされ、スイス航空の塗装で展示されています。

要目（Orion 9D）

• - 乗員：1名
• - 乗客：6名
• - 全長：8.55 m
• - 全幅：13.04 m
• - 全高：2.90 m
• - 空虚重量：1,651 kg
• - 総重量：2,359 kg
• - エンジン：1 × Pratt & Whitney Wasp S1D1,550 hp
• - 最高速度：354 km/h
• - 航続距離：1,159 km
• - 巡航高度：6,705 m

このように、ロッキードModel 9オライオンは航空史に名を刻む高性能な旅客機として、その魅力と技術革新を今に伝えています。

もう一度検索