ロックウェル・コリンズ

ロックウェル・コリンズ：航空電子機器の先駆者

ロックウェル・コリンズは、かつてアメリカ合衆国に存在した多国籍企業で、航空電子機器（アビオニクス）およびITサービスを主要な事業としていました。本社をアイオワ州シーダーラピッズに置き、政府機関や航空機メーカーに高度な技術を提供していました。

歴史

その起源は、1933年にアーサー・A・コリンズによって設立されたコリンズ・ラジオ・カンパニーに遡ります。当初は短波ラジオ機器やAMラジオ機器の設計・製造を手がけていました。また、AMラジオ放送局に加え、軍や科学コミュニティからの特注機器製造も行っていました。特筆すべきは、1933年の海軍少将リチャード・バードによる南極探検の通信リンクを確立するための機器を製造したことです。

第二次世界大戦中には、軍用無線通信およびナビゲーション機器の主要サプライヤーとしての地位を確立。その後、航空管制システム、無線通信機器、衛星電話機器、宇宙開発用通信機器など、幅広い分野に進出しました。特に、マーキュリー計画、ジェミニ計画、アポロ計画といったNASAの有人宇宙飛行計画において、宇宙飛行士と地上局間の通信を支える重要な役割を果たしました。さらに、1973年のスカイラブ計画でも同社の通信機器が使用されました。

1973年、経営難に陥ったコリンズ・ラジオは、ロックウェル・インターナショナルに買収されました。2001年には、ロックウェル・インターナショナルのアビオニクス部門がスピンオフし、ロックウェル・コリンズとして独立。この再編以降、同社は軍用および商用アビオニクス専業企業として、ラジオ受信機などの事業から撤退しました。しかし、メカニカルフィルタなどの一部製品は航空機用途以外にも販売されました。2000年代には、メルコスール諸国への商用アビエーション製品の販売も開始しました。

2010年の時点で、従業員は2万人以上、年商は46億6500万ドルに達していました。

ユナイテッド・テクノロジーズによる買収

2017年9月4日、ユナイテッド・テクノロジーズ（UTC）が300億ドルでロックウェル・コリンズを買収することを発表し、2018年11月26日に買収が完了しました。これにより、ロックウェル・コリンズはUTC傘下のコリンズ・エアロスペースの一部となりました。

製品

ロックウェル・コリンズは、多岐にわたる製品を提供していました。その一部を以下に示します。

放送送信機: AM/FMラジオ放送局向けの送信機。
短波送信機: 「30」シリーズ、ART-13、コリンズ207B-1送信機など。
受信機: 75Aシリーズ、51Jシリーズ、R-390シリーズ、75Sシリーズなど。
送信システム: 32Sシリーズ、30Sシリーズ、KWMシリーズなど。
コンピュータ: C-Systemコンピュータ化メッセージ交換装置。
イントラネット: 回路基板や組み立てのための設計データのストレージ。
ネットワーク送信機システム: 1991年にアルカテルに売却。
機内エンターテイメントシステム: 旅客機向けの座席エンターテイメントシステム。

買収企業

ロックウェル・コリンズは、数多くの企業を買収することで事業を拡大してきました。主な買収企業は以下の通りです。

1998年: Hughes-Avicomの機内エンターテイメント事業
2000年: Sony Trans Com
2002年: Airshow, Inc.
2003年: Intertrade Ltd.、Flight Dynamicsなど
2006年: Evans & Sutherlandの一部、TELDIX GmbHなど
2007年: Information Technology & Applications Corporation
2010年: Athena Technologies、Datapath Inc.、SEOS Displays Ltd.など
2011年: Computing Technologies for Aviation (CTA)
2014年: ARINC
2017年: BE Aerospace

事業部門

ロックウェル・コリンズは、以下の5つの事業部門で構成されていました。

Commercial Systems (CS): 航空会社および商用航空機メーカー向けに、ナビゲーション、通信、コクピットシステム、キャビン内エンターテイメントシステムなどを提供。
Government Systems (GS): アメリカ政府および軍、アメリカの同盟国向けに航空機器を提供。
International and Service Solutions (I&SS): 海外向けのセールス、エンジニアリング、カスタマーサポートなどを提供。
Information Management Services (IMS)
Interior Systems (IS)

ドナルド・R・ベール先進技術センター

ドナルド・R・ベール先進技術センター（ATC）は、ロックウェル・コリンズの研究開発部門であり、将来のビジネス成長に繋がる技術や製品の研究開発を行っていました。

コレクター・コミュニティ

コリンズのアマチュア無線機器は、ビンテージ製品コレクターの間で非常に人気が高く、マニアによるサークルやウェブサイト、インターネット掲示板が活発です。Collins Collectors Association (CCA)やCollins Radio Association (CRA)のような組織も存在します。

関連事項

E.F. Johnson
Future Air Navigation System
Hallicrafters
Hammarlund
National Radio Company
R. L. Drake Company
Signal/One
Vintage amateur radio
レイセオン・テクノロジーズ

ロックウェル・コリンズは、その長い歴史の中で、航空電子機器の分野において多くの革新的な技術を生み出し、航空業界の発展に大きく貢献しました。

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