ロック・アラウンド・ザ・クロック

ロック・アラウンド・ザ・クロック：ロックンロール革命の夜明け

1954年、世界は新しい音楽の衝撃に揺さぶられた。その中心にあったのが、ビル・ヘイリー＆ヒズ・コメッツの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」である。この曲は単なるヒット曲ではなく、ロックンロールという新たな音楽ジャンルを世界に知らしめ、一大ブームを巻き起こした歴史的楽曲と言える。

誕生と紆余曲折：作曲からレコーディングまで

この楽曲はジェイムズ・E・マイヤーズとマックス・C・フリードマンによって1953年に作曲され、アメリカ議会図書館に著作権登録された。しかし、当初はビル・ヘイリーが所属していたエセックス・レコードとの確執により録音は実現しなかった。その後、ヘイリーがデッカレコードに移籍した際に、この曲が彼のデビューシングルとして録音されることが決定。

実は、ビル・ヘイリーよりも先に、ソニー・デイ・アンド・ヒズ・ナイツが同曲をリリースしていた。これは、競作というよりも、ヘイリーの友人であるソニー・デイが、ヘイリーの当時のマネージャーのレコード会社からリリースした、いわば先行リリースだった。

デッカレコードでのレコーディングはニューヨークのピディアン・テンプル・スタジオで行われた。このスタジオは、反響が大きく「ライブ」な音響特性を持っていたため、独特のサウンドを生み出すことに貢献した。ミルト・ゲイブラーのプロデュースの下、バンドメンバーの遅延や、ギターソロのアドリブなど、数々のハプニングを乗り越えてレコーディングは行われた。

世界を席巻した大ヒット：映画とのタイアップとグローバルな成功

1954年5月15日に発売されたシングルは、当初は予想外のヒットではなかった。しかし、後発シングル「シェイク・ラトル・アンド・ロール」の大ヒットをきっかけに、「ロック・アラウンド・ザ・クロック」も再注目され、100万枚以上のセールスを記録。さらに、映画「暴力教室」の主題歌として起用されたことで、世界的な大ヒットへと繋がった。

この曲はビルボードチャートで8週連続1位を獲得し、R&Bチャートでも上位にランクイン。年間総合チャートでも2位という驚異的な成績を収め、世界中でカヴァーされ、2億枚以上のセールスを記録したとされる。日本でも、文化放送『ユア・ヒット・パレード』で1位を獲得するなど、大きな人気を博した。

未解明の謎：作曲者のクレジットとデモ録音の噂

「ロック・アラウンド・ザ・クロック」の作曲者については、依然として謎が残されている。マイヤーズとフリードマンの共同作曲とされているが、フリードマンの貢献度や、他の作曲者の関与の可能性なども指摘されており、真相は藪の中だ。

また、エセックス・レコード在籍時のデモ録音の存在も噂されている。ヘイリーはレコード会社社長の妨害を乗り越えて、ひそかにデモ録音に成功したとも言われているが、証拠は残っていない。

ロックンロール史における位置づけと影響

「ロック・アラウンド・ザ・クロック」は、ロックンロール初期における最大のヒット曲の一つであり、この曲の成功がロックンロールブームの引き金となったことは間違いない。しかし、「ロックンロールで最初の全米1位獲得曲」という主張には異論もあり、歴史的な位置づけについては、現在でも議論が続いている。

この曲は、12小節ブルース進行とバックビートという、R&Bの基本要素を備えつつ、当時のジャズの影響も残している。それが白人アーティストによる黒人音楽の解釈という、新しい音楽性として受け止められ、白人層にも広く受け入れられたと考えられる。

「ロック・アラウンド・ザ・クロック」は、単なるヒット曲の枠を超え、音楽史に大きな足跡を残した楽曲だ。その誕生から成功までの過程、そして未だに解明されていない謎は、この曲に永遠の魅力を与え続けている。

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