ロック・イン・オポジション
ロック・イン・オポジション（Rock in Opposition、RIO）は、1970年代後半に、既存の音楽業界の商業主義的な姿勢に反発したプログレッシブ・ロックバンドの集合体であり、その運動を指す言葉です。「反対派ロック」「異端のロック」とも訳され、その名の通り、当時の音楽業界の主流とは異なる音楽性を持つアーティストたちが、自らの音楽を追求するために結集しました。
1978年3月、イギリスの前衛ロックバンド、ヘンリー・カウが中心となり、ヨーロッパ各地の革新的なグループをロンドンに招待し、「ロック・イン・オポジション」フェスティバルが開催されました。これは、レコード会社から商業的価値がないと判断され、無視されてきたアーティストたちが、互いに連帯し、自分たちの音楽を世に問うための試みでした。
ヘンリー・カウは、自国イギリスでは評価されなかったものの、ヨーロッパ本土では多くの共感を得ていました。彼らが注目したのは、レコード会社が興味を示さない、しかし、音楽的に優れたグループでした。フェスティバルは、「レコード会社があなたに聴かせたくない音楽」というスローガンのもと開催され、以下のバンドが出演しました。
ヘンリー・カウ（イングランド）
ストーミー・シックス（イタリア）
サムラ・ママス・マンナ（スウェーデン）
ユニヴェル・ゼロ（ベルギー）
エトロン・フー・ルルーブラン（フランス）
このフェスティバルは、当初は単なるイベントとして企画されましたが、世界中から注目を集め、参加バンドの間で、将来的な連携についての話し合いが行われるようになりました。その結果、1978年12月には、スイスでRIOを再構築するための会合が開かれ、正式な組織としての活動が始まりました。
RIOの主な目的は、個々のメンバーの音楽活動を支援し、プロモーションすることでした。メンバーは固定式で小規模な組織を維持すること、そして「音楽の卓越性」、「音楽ビジネスの外での活動」、「ロックへの社会的責任」という３つの基準を満たす場合に、新たなメンバーを受け入れるという方針が決定されました。これらの基準に基づき、以下の３つのバンドが新たにRIOに加わりました。
アール・ゾイ（フランス）
アート・ベアーズ（イングランド、元ヘンリー・カウのメンバーで構成）
アクサク・マブール（ベルギー）
1979年には、イタリア・ミラノで2回目のRIOフェスティバルが開催されましたが、グループ間で意見の相違が生じ、組織としてのRIOは、その役割を果たすことが難しくなり、1979年末には事実上活動を停止しました。
RIOのメンバーであったクリス・カトラーは、1978年末頃に、アーティストのための独立したレコードレーベル兼配給ネットワーク「レコメンデッド・レコード（RēR）」を設立しました。RIOが組織としての活動を停止した後、RēRはRIOの遺志を継ぎ、所属アーティストのプロモーションを行いました。RēRは、RIOの精神を受け継ぐ「仮想のRIO」として、その音楽的遺産を後世に伝える役割を担いました。
組織としてのRIOは消滅しましたが、「RIO」という名称は、特定の音楽ジャンルを指す言葉として使われるようになりました。RIOのオリジナルメンバーの音楽性は多様でしたが、RIOフェスティバルに参加したバンドや、その影響を受けたアーティストたちが、特定の音楽的な特徴を持つグループとして認識されるようになったのです。このジャンルは、「アヴァン・プログ」（前衛的プログレッシブ・ロックの略）と呼ばれることもあります。
2007年以降、フランスを中心に「RIO再会」フェスティバルが開催され、RIOの精神を受け継ぐアーティストたちが集結しました。これらのフェスティバルでは、往年のRIOバンドに加え、現代の先鋭的な音楽家も数多く参加しました。日本でも2014年に「ロック・イン・オポジション・ジャパン」が開催され、RIOの精神が世界に広がり続けていることを示しました。
RIOは、商業主義的な音楽業界に反発し、音楽の創造性と革新性を追求した、音楽史における重要な運動です。その影響は、現代の音楽シーンにも深く根付いています。
RIOの歴史や音楽家たちを記録したドキュメンタリー映画も制作されています。
『アバウト・ロック・イン・オポジション』 (2012年)
『続・アバウト・ロック・イン・オポジション』 (2013年)
『ロック・イン・オポジション・ジャパン・フェスティバル2014』 (2018年)
これらの作品を通して、RIOの精神や音楽に触れることができます。
クリス・カトラー著『ファイル・アンダー・ポピュラー - ポピュラー音楽を巡る文化研究』
プログレッシブ・ロック
Rock in Opposition - Squidco
Rock in Opposition - Chris Cutler homepage
Melody Maker review of the 1st RIO festival - Stormy Six homepage
Interview with Chris Cutler on RIO, 1998 - Mitkadem.co.il
Cutler, Chris (1984). File Under Popular - Fragment (in Russian): Progressive Music in the UK, parts 1,2
RIOの誕生
1978年3月、イギリスの前衛ロックバンド、ヘンリー・カウが中心となり、ヨーロッパ各地の革新的なグループをロンドンに招待し、「ロック・イン・オポジション」フェスティバルが開催されました。これは、レコード会社から商業的価値がないと判断され、無視されてきたアーティストたちが、互いに連帯し、自分たちの音楽を世に問うための試みでした。
ヘンリー・カウは、自国イギリスでは評価されなかったものの、ヨーロッパ本土では多くの共感を得ていました。彼らが注目したのは、レコード会社が興味を示さない、しかし、音楽的に優れたグループでした。フェスティバルは、「レコード会社があなたに聴かせたくない音楽」というスローガンのもと開催され、以下のバンドが出演しました。
ヘンリー・カウ（イングランド）
ストーミー・シックス（イタリア）
サムラ・ママス・マンナ（スウェーデン）
ユニヴェル・ゼロ（ベルギー）
エトロン・フー・ルルーブラン（フランス）
このフェスティバルは、当初は単なるイベントとして企画されましたが、世界中から注目を集め、参加バンドの間で、将来的な連携についての話し合いが行われるようになりました。その結果、1978年12月には、スイスでRIOを再構築するための会合が開かれ、正式な組織としての活動が始まりました。
RIOの理念と組織
RIOの主な目的は、個々のメンバーの音楽活動を支援し、プロモーションすることでした。メンバーは固定式で小規模な組織を維持すること、そして「音楽の卓越性」、「音楽ビジネスの外での活動」、「ロックへの社会的責任」という３つの基準を満たす場合に、新たなメンバーを受け入れるという方針が決定されました。これらの基準に基づき、以下の３つのバンドが新たにRIOに加わりました。
アール・ゾイ（フランス）
アート・ベアーズ（イングランド、元ヘンリー・カウのメンバーで構成）
アクサク・マブール（ベルギー）
1979年には、イタリア・ミラノで2回目のRIOフェスティバルが開催されましたが、グループ間で意見の相違が生じ、組織としてのRIOは、その役割を果たすことが難しくなり、1979年末には事実上活動を停止しました。
レコメンデッド・レコードの設立
RIOのメンバーであったクリス・カトラーは、1978年末頃に、アーティストのための独立したレコードレーベル兼配給ネットワーク「レコメンデッド・レコード（RēR）」を設立しました。RIOが組織としての活動を停止した後、RēRはRIOの遺志を継ぎ、所属アーティストのプロモーションを行いました。RēRは、RIOの精神を受け継ぐ「仮想のRIO」として、その音楽的遺産を後世に伝える役割を担いました。
ジャンルとしてのRIO
組織としてのRIOは消滅しましたが、「RIO」という名称は、特定の音楽ジャンルを指す言葉として使われるようになりました。RIOのオリジナルメンバーの音楽性は多様でしたが、RIOフェスティバルに参加したバンドや、その影響を受けたアーティストたちが、特定の音楽的な特徴を持つグループとして認識されるようになったのです。このジャンルは、「アヴァン・プログ」（前衛的プログレッシブ・ロックの略）と呼ばれることもあります。
RIOの再会
2007年以降、フランスを中心に「RIO再会」フェスティバルが開催され、RIOの精神を受け継ぐアーティストたちが集結しました。これらのフェスティバルでは、往年のRIOバンドに加え、現代の先鋭的な音楽家も数多く参加しました。日本でも2014年に「ロック・イン・オポジション・ジャパン」が開催され、RIOの精神が世界に広がり続けていることを示しました。
RIOは、商業主義的な音楽業界に反発し、音楽の創造性と革新性を追求した、音楽史における重要な運動です。その影響は、現代の音楽シーンにも深く根付いています。
RIO関連映像
RIOの歴史や音楽家たちを記録したドキュメンタリー映画も制作されています。
『アバウト・ロック・イン・オポジション』 (2012年)
『続・アバウト・ロック・イン・オポジション』 (2013年)
『ロック・イン・オポジション・ジャパン・フェスティバル2014』 (2018年)
これらの作品を通して、RIOの精神や音楽に触れることができます。
参考文献
クリス・カトラー著『ファイル・アンダー・ポピュラー - ポピュラー音楽を巡る文化研究』
関連情報
プログレッシブ・ロック
外部リンク
Rock in Opposition - Squidco
Rock in Opposition - Chris Cutler homepage
Melody Maker review of the 1st RIO festival - Stormy Six homepage
Interview with Chris Cutler on RIO, 1998 - Mitkadem.co.il
Cutler, Chris (1984). File Under Popular - Fragment (in Russian): Progressive Music in the UK, parts 1,2
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