ロッコヴィアン

ロッコヴィアン（Lochkovian）

ロッコヴィアンは、国際層序委員会によって認識された地質学的な時代の一つであり、前期デボン紀を構成する最初の期間です。この時代は約4億1920万年前から4億1080万年前にかけて存在したとされており、デボン紀の他の時期と比較しても特に重要な意味を持っています。日本語ではロホコフ期とも称されます。

名称とGSSP

ロッコヴィアンという名前は、チェコのLochkovという地名に由来しています。国際標準模式層断面及び地点（GSSP）は、チェコのプラハの南西約35キロメートルの地点、具体的にはSuchomasty近くのクロンクに設定されています。この地点は1972年に国際層序委員会によって公式に認定されました。そこで見られる石灰岩は、外洋や干潟の海水、そして河川の環境から堆積した泥によって形成されており、化石の宝庫として知られています。特に、指標的な化石であるMonograptus uniformis uniformisや、シルル紀からデボン紀にかけて産出される三葉虫のWarburgella rugulosa rugosaがここから発見されています。

生物群の多様性

ロッコヴィアン期は「魚の時代」とも称されるデボン紀の中に位置しており、この時代に生息していた多くの魚類が化石として残されています。その中には、現在は絶滅した種も多く含まれています。特にカナダのノースウエスト準州に位置するマッケンジー山脈南部で見つかった棘魚綱のパウキカントゥス・ヴァネルスティ（Paucicanthus vanelsti）は、胸鰭棘と骨盤鰭棘を持たない特異な種です。

さらに、中国雲南省では新しい属にあたる板皮類のガヴァナスピスが発見されており、これもまた当時の生物多様性を示す重要な存在です。このガヴァナスピスは基盤的なフィロレピス目と派生的なフィロレピス目の特性を併せ持つことから、進化の過程や古生物地理学において特別な意義があります。系統解析の結果、ガヴァナスピスはフィロレピス目内でフィロレピス科の姉妹群とされており、これにより当時の中国とゴンドワナ大陸の生物の交流が示唆されています。ロッコヴィアン期には、これら二つの地域は近い位置に存在していたことがわかります。

日本におけるロッコヴィアン期の証拠

日本においても、ロッコヴィアン期の証拠が数多く発見されています。岩手県の大船渡市日頃市地域に位置する南部北上帯の大野層からは、放散虫化石が発見されており、これは四国によく似た西南日本の黒瀬川帯のTlecerina - Glanta群集とも関連付けられています。釜石市の千丈ヶ滝層においても、同様に放散虫化石が見つかり、これがロッコヴィアン期に由来することが示唆されています。特に、放散虫の主棘の稜が根元でのみ存在することとは対照的に、先端で分岐しない明瞭な稜を持つことが特徴的です。このような特徴は、ロッコヴィアン期からエムシアン期にかけて発展したことが考えられています。

同様に、岐阜県高山市上宝村の吉城層も放散虫の研究から上部シルル系からエムシアン階に至ることが指摘されています。さらに、福地層ではコノドントや貝虫の化石があり、これがロッコヴィアン階からエムシアン階に相当することが示されています。このように、日本においてもロッコヴィアンの痕跡はさまざまな地点で確認されており、古生物学的な研究にとって重要な要素となっています。

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