ロバート・ジョーダン

ロバート・ジョーダン（本名ジェイムズ・オリヴァー・リグニー・Jr.）は、1948年10月17日に生まれ、2007年9月16日に惜しまれながら世を去ったアメリカ合衆国の著名なファンタジー作家です。彼の名は、特に壮大なる長編シリーズ『時の車輪』（The Wheel of Time）の創造者として世界中のファンタジー愛好家に知られています。

サウスカロライナ州チャールストンに生を受けたジョーダンは、作家となる以前に異色の経歴を歩んでいます。彼は二度にわたりベトナム戦争に従軍し、帰国後はサウスカロライナ州シタデル士官学校にて物理学の学位を取得しました。その後、アメリカ合衆国海軍の原子力技術者として勤務するという、文学者としては珍しいキャリアを積んでいます。こうした軍務や技術分野での経験が、後の彼の作品世界に深みや独自の視点をもたらした可能性は否定できません。

1977年に作家活動を開始した当初、ジョーダンはロバート・ジョーダンという名前だけでなく、リーガン・オニールといった他のペンネームも使用し、ファンタジーだけでなく、歴史小説やロマンスといった多様なジャンルの作品を執筆していました。多方面での執筆経験は、彼の技量を磨く土壌となったと言えるでしょう。

ロバート・ジョーダン名義では、ファンタジー界の古典であるロバート・E・ハワードの『英雄コナン』シリーズの新たな物語も手がけました。この経験を経て、彼は自身のライフワークとなるシリーズの構想を本格化させます。

そして1990年、記念すべき『時の車輪』シリーズの第一巻『竜王伝説』（The Eye of the World）を上梓しました。このシリーズは、複雑に入り組んだプロット、多数の魅力的な登場人物、精緻に構築された魔法や世界のルールにより、瞬く間に読者の心を掴みました。壮大なスケールで描かれる善と悪の戦い、運命の輪の循環といったテーマは多くのファンを惹きつけ、シリーズは世界的なベストセラーとなり、ジョーダンはファンタジー文学界における最重要人物の一人となりました。

しかし、その創作活動が最高潮にある中、2006年にジョーダンは希少で治療が難しい病、アミロイドーシスを患っていることを公表します。彼は『時の車輪』シリーズを全12巻で完結させるという明確な目標を持っていました。しかし、病状の進行は予想以上に早く、彼の筆を止めてしまいました。

シリーズの最終巻を自身の手で書き終えるという彼の強い願いは、残念ながら叶いませんでした。2007年9月16日、ロバート・ジョーダンは58歳という若さでこの世を去りました。彼の死により、『時の車輪』シリーズは未完のまま残されるという事態になりました。

彼の主な作品には、Fallonシリーズ、ロバート・E・ハワードの『英雄コナン』シリーズの続編があります。そして、彼の最大の功績は、やはり膨大な巻数からなる『時の車輪』シリーズです。このシリーズには、『竜王伝説』、『妖獣あらわる！』、『魔の城塞都市』といった初期の巻から、彼の生前に出版された最終巻に近いものまで、非常に多くのサブタイトルが存在し、その一つ一つが広大な物語世界の一部を成しています。

ロバート・ジョーダンは、その波乱に富んだ人生経験と卓越した物語創造力をもって、現代ファンタジー文学に計り知れない影響を与えました。彼の死はファンタジー界にとって大きな損失であり、彼が創造した『時の車輪』の世界は、今後も多くの読者に読み継がれていくでしょう。

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