ロバート・E・ハワード

ロバート・E・ハワード：パルプ・マガジン黄金期の巨匠とその影

ロバート・アーヴィン・ハワード(1906年1月22日 - 1936年6月11日)は、20世紀前半のパルプ・マガジン全盛期を彩ったアメリカ合衆国の作家である。怪奇幻想とアクションを融合させたヒロイック・ファンタジーの開祖として、特に「英雄コナン」シリーズで知られ、その影響は現代のファンタジーにも色濃く残っている。コナンは、大恐慌時代の読者を引き込んだ『ウィアード・テイルズ』誌を代表するキャラクターとなり、ターザン、ドラキュラ、シャーロック・ホームズ、バットマン、ジェームズ・ボンドらと並ぶ文化的アイコンとしての地位を確立した。数多くの模倣作品を生み、ファンタジーというジャンルに革命をもたらした彼の功績は計り知れない。

ハワードは多作な作家として知られ、その作品数は300を超える。ヒロイック・ファンタジー、怪奇小説、冒険小説、ハードボイルド、歴史小説、西部劇、そして喜劇小説にまで及ぶその多様なジャンルは、当時のパルプ・マガジンの経営事情を反映している。原稿料の支払いが不安定だったため、作家は様々な雑誌に作品を投稿せざるを得なかったのだ。しかし、その多作さと才能は徐々に認められ、年間収入はわずか50ドルから2000ドル以上にまで増加。故郷クロスプレインズではトップクラスの稼ぎ手となった。晩年は西部劇に傾倒していたことも特筆される。

ハワードは、H・P・ラヴクラフトら著名な作家たちと親交を深め、彼らとの交流は彼の創作活動に大きな影響を与えた。ラヴクラフトとは文通を通じてクトゥルフ神話を共有し、『黒の碑』などクトゥルフ神話作品も執筆している。また、オーガスト・ダーレス、クラーク・アシュトン・スミスとも親交があり、彼らが創造した世界観もハワードの作品に反映されている。彼の創作した「無名祭祀書」は、後世のクトゥルフ神話作家たちにも利用されるなど、大きな影響力を持っていた。さらに、SF作家であった友人のO・A・クラインは、ハワードの著作権エージェントとして彼を支え、自身の執筆活動を休止するほど献身的な協力者であった。

1924年、怪奇小説専門誌『ウィアード・テイルズ』に作品が掲載され、翌年には作家としてデビュー。23歳まで成功を掴むことはなかったが、その後は様々な雑誌で活躍し、多様なジャンルで成功を収めた。コナンシリーズの第一作「不死鳥の剣」は1932年に発表され、大きな人気を博した。しかし、彼の作品は生前単行本化されることはなく、コナン作品も単行本化寸前で頓挫している。

ハワードの生涯は、30歳という若さで自ら命を絶ったことで幕を閉じている。その死の直前、彼は長年結核を患っていた母親の危篤を知った。母親は昏睡状態に陥っており、回復の見込みはなかった。その悲しみと絶望から、ハワードは銃で自らの命を絶った。母親も翌日に亡くなっている。

彼の自殺は、エディプスコンプレックスや重度のうつ病といった精神疾患、母親の死への衝動的な反応など、様々な憶測を呼んだ。以前から自殺をほのめかしていたという事実も、議論を複雑にしている。しかし、サヴァン症候群やアスペルガー症候群との関連は、彼の作品を批判した文芸批評家による憶測に過ぎず、医学的な根拠はない。心臓疾患を患っていたことも判明している。

ハワードの交際相手として知られるのは、ノーヴェリン・プライス・エリスただ一人である。彼女は高校教師であり、作家志望でもあった。二人の交際はハワードの晩年まで続いたが、プライスの転居により終止符を打たれた。プライスは後にハワードについての回想録「One Who Walked Alone」を発表し、その貴重な記録は、後のハワード研究に大きく貢献した。この回想録は後に映画化もされている。

ハワードは1960年代後半にアメリカで再評価され、日本には1969年に紹介された。現在でも、彼の作品は世界中で読まれ続けている。彼の残した作品群は、現代のファンタジー、ホラー、冒険小説に多大な影響を与え続け、その偉大な功績は今後も称えられ続けるだろう。 彼の作品は、ハヤカワ文庫、創元推理文庫、新紀元社などから翻訳版が多数出版されている。

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