ロバート・ダドリー (初代レスター伯)

初代レスター伯ロバート・ダドリー(1532-1588)は、イングランドの政治史において重要な役割を果たした廷臣であり貴族でした。彼は、テューダー朝最後の女王、エリザベス1世の寵臣として知られ、その生涯は権力、ロマンス、そして数々のスキャンダルに彩られています。

出自と初期のキャリア

ダドリーは、後にノーサンバランド公となるジョン・ダドリーの五男として生まれました。彼の父は国政に深く関与しており、その影響下でダドリーも政治の世界に足を踏み入れます。若きダドリーは、裕福な地主の娘エイミーと結婚し、政治家としてのキャリアを着実に築いていきました。しかし、彼の父はエリザベス1世の異母姉であるメアリー女王の即位阻止を企てた反逆罪で処刑され、ダドリー自身も死刑判決を受けますが、後に赦免されています。

エリザベス1世との関係

エリザベス1世の即位後、ダドリーは瞬く間に女王の寵臣となります。彼は主馬頭に任命され、枢密顧問官にも列し、さらにガーター勲章を受章するなど、急速に地位を高めていきました。女王との親密な関係は、やがて愛人関係へと発展し、結婚の噂も飛び交うようになります。しかし、妻エイミーの不可解な死を巡る疑惑や、ダドリーの奔放な女性関係は、彼と女王の結婚を阻む大きな障害となりました。

宮廷における派閥争い

宮廷内では、ダドリーは初代バーリー男爵ウィリアム・セシル率いる派閥と対立していました。セシルは保守的な政策を主張する一方、ダドリーは対スペイン強硬派として知られ、しばしば意見が対立しました。ダドリーは、セシル排除を企て、スコットランド女王メアリー・ステュアートとの結婚計画にも関与しましたが、女王の怒りを買い、計画は頓挫します。この派閥争いは、ダドリーの生涯を通して続きました。

ネーデルラント遠征と失脚

1585年、ダドリーはネーデルラント反乱軍への支援を目的とする遠征軍の指揮官に任命されます。しかし、女王の命令に背いてネーデルラント総督の地位を受け入れたことや、軍事指揮官としての能力不足から、遠征は失敗に終わり、ダドリーは女王の不興を買い、帰国を余儀なくされました。

晩年と死

1588年、スペイン無敵艦隊の来襲に際し、ダドリーは沿岸防衛の指揮を任されますが、海戦前に病に倒れ、同年9月に死去しました。彼には嫡出子がなかったため、彼の死によってレスター伯位は消滅しました。エリザベス1世は、彼の死を深く悲しみ、彼からの最後の手紙を生涯大切に保管したと伝えられています。

人物像と評価

ダドリーは、女王の寵愛を背景に、横柄な態度をとることが多く、他の側近たちからは嫌われていたようです。しかしながら、彼は、演劇や天文学など幅広い教養を持ち、才能豊かな人物でもありました。彼の生涯は、成功と失敗、愛と憎しみが複雑に絡み合った、ドラマチックなものでした。エリザベス1世の治世に大きな影響を与えた人物として、歴史にその名を残しています。

家族関係

ダドリーは、最初の妻エイミーとの間に子供はなく、2度目の妻レティスとの間に生まれた息子も夭折しています。また、愛人との間に非嫡出子も存在したとされています。彼の複雑な家族関係は、彼の人物像を考える上で重要な要素の一つです。

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