ロバート・テイラー (俳優)

ロバート・テイラー：ハリウッド黄金期の美貌と才能、そして影

ロバート・テイラー (1911年8月5日 - 1969年6月8日) は、20世紀ハリウッドを代表する俳優の一人です。ネブラスカ州で医師の家庭に生まれた彼は、本名スパングラー・アーリントン・ブルー。当初は音楽を志し、チェロを専攻していましたが、カリフォルニア州に移り住んだことをきっかけに俳優の道へ進みます。

ポモナ大学在学中に演劇に目覚め、舞台で才能を開花させたテイラーは、[メトロ・ゴールドウィン・メイヤー]にスカウトされ、1934年に7年間の契約を結びます。映画デビューは20世紀フォックスへの貸し出し作品でしたが、すぐに頭角を現し、1936年には興行収入の高いスターのランキングで4位にランクインするほどの人気俳優となりました。

端正なルックスと洗練された演技で、グレタ・ガルボ、ジョーン・クロフォード、バーバラ・スタンウィックといった当時を代表する女優たちと共演を重ねました。特にバーバラ・スタンウィックとは映画での共演がきっかけで恋に落ち、1939年に結婚しています。1940年には、ヴィヴィアン・リーとの共演作『哀愁』の大ヒットによって、ハリウッドにおける彼の地位は不動のものとなりました。

しかし、テイラーのスター街道は順風満帆とは限りませんでした。1944年の作品『Song of Russia』で親ソ的な役柄を演じたことが、後に彼のキャリアに大きな影を落とすことになります。1947年、彼は下院非米活動委員会に召喚され、厳しい追及を受けました。アメリカへの忠誠を誓い、嫌疑を否定しましたが、ハリウッドを席巻した赤狩りの嵐は、テイラーをも例外なく襲ったのです。

赤狩りの影響は長く尾を引き、彼のキャリアにも少なからず影響を与えたものの、テイラーはその後も活動を続けました。1951年には『クォ・ヴァディス』の大ヒットによってアクションスターとしての地位も確立し、人気を維持します。私生活では、1951年にスタンウィックと離婚。1954年にはウルスラ・ティースと再婚し、子供にも恵まれます。1950年代後半にはテレビシリーズ『ミステリー61』で主演を務めるなど、活躍の場を広げました。

しかし、1961年にMGMとの契約が終了すると、以前ほどの活躍はできなくなります。そして1969年、肺ガンのため、57歳の若さでこの世を去りました。

彼の功績を称え、MGM撮影所にはロバート・テイラー・ビルと名付けられた建物がありましたが、一部の脚本家たちが彼が非米活動委員会で証言したことを問題視し、ロビー活動を行った結果、1989年にはジョージ・キューカー・ビルと改名されました。このエピソードは、テイラーの輝かしいキャリアの裏に潜む複雑な歴史の一端を示しています。

ロバート・テイラーは、その美貌と才能でハリウッド黄金期を彩ったスターでしたが、時代の波に翻弄された一面も持ち合わせていました。彼の生涯は、ハリウッドの栄光と影、そしてその時代の葛藤を私たちに教えてくれる、貴重な物語です。

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