ロバート・ディール

ロバート・ディール（Robert Deal、？-1721年）は、18世紀初頭、大西洋の海賊の黄金時代末期にカリブ海で活動した海賊です。彼は特に、悪名高き海賊船長チャールズ・ヴェインの腹心としてその名を残しています。

海賊共和国での活動

ディールは、バハマ諸島のナッソーに存在した海賊たちの無法地帯、「海賊共和国」において、ヴェインの一味に加わっていました。この地は多くの海賊にとって事実上の本拠地となっていましたが、イギリス本国は看過せず、秩序回復を図りました。

1717年、英国国王ジョージ1世は、全ての海賊に対し、その犯罪行為を放棄することを条件に国王の恩赦を申し出ました。しかし、ヴェインとその仲間たちはこの寛大な措置を断固として拒否。彼らは海賊行為を続ける道を選びました。

1718年10月、新たなバハマ総督として派遣されたウッズ・ロジャーズは、ナッソーからの海賊掃討を開始します。ヴェインとその一味は総督の追跡を逃れ、海賊の本拠地奪回を目指し、ノースカロライナにいた高名な海賊エドワード・ティーチ（通称黒髭）に協力を求めました。しかし、黒髭はこの要請を断り、ヴェインたちの計画は頓挫しました。

略奪と船内での争い

バハマ諸島へ戻ったヴェインたちは、再び略奪を開始します。彼らはエルーセラ島を襲撃し、住民から必要な物資や金品を力ずくで奪い取りました。さらに同年10月23日、小型のスループ船とブリガンティン船エンデヴァー号を捕獲しました。この際、ブリガンティン船の船長であったシャトック氏は激しく抵抗し、ヴェインたちから容赦ない暴行を受けました。伝えられるところによれば、この時ディールは抵抗するシャトック船長を前に、「この老いぼれ犬め、隠している金を吐き出さなければ、お前の船ごと地獄へ沈めてやるぞ」と凄惨な言葉で脅迫したと言われています。このエピソードは、ディールがヴェイン一味の中でも特に凶暴であったことを示唆しています。

しかし、ヴェインたちの船内にも不和は存在しました。11月23日、一味はフランスの軍艦と遭遇します。ヴェインは軍艦への攻撃は危険すぎるとして反対しましたが、彼の操舵手であったジャック・ラカムがこれに異を唱え、軍艦を襲撃すべきだと主張しました。船員たちの投票によってラカムが新しいリーダーに選ばれ、ヴェインは船長の座を追われます。ヴェインと共に軍艦攻撃に反対したディールを含む15人の乗組員は、反抗的な態度をとった罰として、僅かな物資と共に小さなスループ船に乗せられ、元の船から追放されてしまいました。

再起の試みと最期

小さなスループ船を与えられたヴェインと追放された仲間たちは、ホンジュラス湾沿岸を南下し、そこで船を修繕し、体勢を立て直す機会を窺いました。11月末頃には、別のスループ船を捕らえることに成功し、海賊団は再び活動を始めます。ディールはこの拿捕したスループ船の指揮官を任されました。

しかし、彼らの再起の試みは長くは続きませんでした。翌1719年2月頃、ヴェインたちを激しい嵐が襲いました。船は四散し、乗組員たちは離れ離れになってしまったのです。

ヴェイン自身はホンジュラス沖の無人島に漂着しましたが、運良く通りかかった商船に救助されました。しかし、その正体が露見したため、ジャマイカへ護送されることになりました。ディールもまた、嵐の後、別の軍艦によって捕らえられ、ジャマイカへ連行されました。

ジャマイカのポートロイヤルにて、二人は長期にわたる裁判にかけられました。海賊行為に対する裁判は厳正に行われ、最終的に有罪判決が下されました。ロバート・ディールとチャールズ・ヴェインは、1721年にポートロイヤルで共に絞首刑に処され、その激動の生涯を閉じたのです。

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