ロバート・フィルマー

サー・ロバート・フィルマー

サー・ロバート・フィルマー（Sir Robert Filmer、1588年頃 - 1653年5月26日）は、1680年に発表された著作『パトリアーカ』（『家父長論』としても知られる）で有名なイングランドの政治哲学者です。彼は、神がアダムに家族や子孫を支配する権利を与え、この権利が代々の家父長に引き継がれるという理論を提唱しました。この考え方は、王権神授説の基礎を成し、フィルマーが支持した絶対君主制の正当性を主張する重要な文献となりました。彼は、一貫して王党派としての立場を貫き、ピューリタン革命が勃発した際には王権の擁護に努めたため、何度も投獄されたり、自宅を押収される苦境に立たされました。実際、彼の邸宅は10回以上にわたり没収されています。

生涯と教育

フィルマーはケント州イースト・サットンにて、サー・エドワード・フィルマー（Sir Edward Filmer）とエリザベス・フィルマー（Elizabeth Filmer）の長男として生まれました。1604年にトリニティ・カレッジに入学したものの、学位は取得せず、1605年にはリンカーン法曹院に進学しました。1618年、彼はアン・ヘトン（Anne Heton）と結婚し、後に3人の息子と1人の娘をもうけました。

1629年に父が亡くなると、フィルマーは父の遺産を相続し、以降、郡の役員としての活動を開始しました。この頃から彼の代表作となる『パトリアーカ』の執筆を始めたとされています。この著作は、政治的背景の中で王権を支持する意図を持ち、フィルマーの思想が形成されていく過程を示しています。

政治活動と投獄

1641年以降、ピューリタン革命が始まると、フィルマーは王党派としての立場を強固にし、国王チャールズ1世を支持し続けました。そのため、1643年には投獄されてしまい、当時の政治的動乱の中で困難な時期を経験しました。しかし、彼は1647年に釈放されました。確固たる信念を持つ彼の姿勢は、多くの支持者を集める一方で、反対者からの厳しい批判も受けるものでした。

著作と思想

フィルマーの主な著作には、1652年に書かれた『政府起源論』、1648年に著された『制限王政の無政府状態』や『絶対王権の必要』などがあります。彼は、トマス・ホッブズやフーゴー・グローティウスといった思想家に対して批判的であり、特にジョン・ロックの著作『統治二論』では、『パトリアーカ』について強く反論されました。フィルマーの理論は、権力の正当性に対する新しい視点を提供し、その後の政治思想に多大な影響を与えました。

フィルマーは1653年に亡くなりましたが、彼の思想は、特にイギリスの政治哲学の発展において重要な位置を占めています。彼の段階的な家父長的権力の観点から、王権の正当性を論じた『パトリアーカ』は、政治的権威の源に関する議論を今なお喚起しています。このため、彼の著作は現代においても研究の対象となり続けています。

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