ロバート・メリフィールド

ロバート・ブルース・メリフィールドは、1921年7月15日、アメリカ合衆国テキサス州フォートワースに生を受けました。生後間もなく、家族と共にカリフォルニア州へ移り住み、少年期から青年期を過ごします。いくつかの学校を経て、1939年にモンテベッロ高校を卒業。学生時代を通じて、彼は化学と天文学の両分野に深い好奇心を抱くようになりました。

高校卒業後の進路として、パサデナジュニアカレッジに進学し、その後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校（UCLA）へ編入。大学での学びを終えた後、フィリップ・R・パーク研究基金にて、動物の集団行動やアミノ酸摂取に関する研究に従事しました。再びUCLAへ戻ったメリフィールドは、生化学科のM.S.ダン教授のもとでピリミジンの定量法に関する研究を行い、専門知識を深めていきました。

私生活では、1949年7月19日に結婚。その後、研究の場をニューヨークへと移し、ロックフェラー医学研究所に勤務します。組織変更を経てロックフェラー大学に籍を置き、そこで彼の名を世界に知らしめることになる画期的な研究に取り組み始めました。

1959年、メリフィールドは固相を用いたペプチド合成法という革新的なアイデアを着想します。当時、複雑な分子であるペプチドの合成は煩雑で時間のかかる作業でしたが、この新しい手法は合成を効率化し、自動化の可能性を拓くものでした。彼はこの方法論の研究を精力的に進め、1963年にその成果をジャーナル･オブ･アメリカン・ケミカル・ソサイエティー誌上で発表しました。この報告は、化学合成の世界に大きな衝撃を与えました。

固相ペプチド合成法の確立後、メリフィールドの研究室ではこの手法を応用し、ブラジキニン、アンギオテンシン、インスリンといった生理学的に重要なペプチドを世界で初めて化学的に合成することに成功しました。これらの合成成功は、生化学、医学、薬学といった広範な分野に革命をもたらしました。これにより、従来天然から得るしかなく量の限られていた酵素やホルモンなどのペプチド性物質を、実験室で比較的容易に合成できるようになり、その機能解明や新しい医薬品の開発が飛躍的に進展したのです。

メリフィールドの功績は国内外で高く評価され、数々の栄誉に輝きました。特に、固相ペプチド合成法の開発とその生命科学への貢献が認められ、1984年には化学分野の最高峰であるノーベル化学賞を受賞しました。

ノーベル賞以外にも、メリフィールドは以下のような重要な賞を受賞しています。

1969年 - アルバート・ラスカー基礎医学研究賞
1970年 - ガードナー国際賞
1973年 - ウィリアム・H・ニコルズ賞
1986年 - センテナリー賞
* 1993年 - グレン・T・シーボーグ・メダル、化学パイオニア賞

晩年には、1993年に自身の生涯と研究活動をまとめた自伝を出版しました。ロバート・ブルース・メリフィールドは、2006年5月14日にニュージャージー州クレスキルでその生涯を終えました。彼の開発した固相ペプチド合成法は、今日の化学、生物学、医学研究において不可欠な基本技術の一つとして、今なお広く利用されています。

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