ロバート・ワイアット

ロバート・ワイアット（Robert Wyatt, 1945年1月28日 - ）は、イギリス出身のロックミュージシャン、シンガーソングライター、そして元ドラマーです。彼はカンタベリー・ロックの重要な担い手として知られています。

若き日の活動とソフト・マシーン

ワイアットは、1960年代にカンタベリー・ミュージックの始祖とも言える「ワイルド・フラワーズ」でキャリアをスタートさせました。その後、同バンドから発展したジャズ・ロック・バンド「ソフト・マシーン」にドラマー兼ボーカリストとして参加し、1968年にデビューを果たしました。ソフト・マシーンは、革新的な音楽性で、当時の音楽シーンに大きな影響を与えました。

1970年には初のソロ・アルバムを発表し、シド・バレットのソロ・アルバム『帽子が笑う…不気味に』でもドラムを叩くなど、その才能を発揮しました。しかし、ソフト・マシーンの音楽性と自身の音楽性の乖離が大きくなり、1971年のアルバム『4』を最後にバンドを脱退しました。

マッチング・モウルと事故

ソフト・マシーン脱退後、ワイアットは1971年11月にニュー・ヴァイオリン・サミットを結成し、またデイヴ・シンクレアらと「マッチング・モウル」を結成して1972年に2枚のアルバムを発表しました。しかし、1973年6月1日、パーティで飲酒後、窓から転落し脊髄を損傷。下半身不随となり、ドラマーとしてのキャリアを絶たれてしまいます。

ソロ・シンガーとしてのカムバック

多くのミュージシャン仲間に支えられ、ニック・メイスンのプロデュースにより、1974年にソロ・アルバム『ロック・ボトム』でシンガーソングライターとしてカムバックを果たしました。このアルバムは、ワイアットの音楽的才能と、苦難を乗り越えて再起した彼の精神性が凝縮された傑作として、高く評価されています。

その後も、ワイアットはマイペースな活動を続け、数々のアルバムを発表しました。彼の音楽は、独特のメロディと、社会的なメッセージを込めた歌詞が特徴です。また、他のアーティストとの交流も盛んで、ブライアン・イーノ、坂本龍一、ビョーク、デヴィッド・ギルモア、ポール・ウェラーなど、多くのミュージシャンの作品に参加しています。

引退と音楽的遺産

2014年、ワイアットは音楽創作からの引退を発表しました。しかし、彼の音楽は今もなお、多くの人々に愛され、影響を与え続けています。ソフト・マシーン時代の革新的な音楽性、ソロ・シンガーとしての独自の表現力、そして苦難を乗り越えて音楽を追求する姿勢は、音楽史に大きな足跡を残しました。

ワイアットのディスコグラフィーには、ソフト・マシーン時代のアルバム、マッチング・モウルのアルバム、そして数多くのソロ・アルバムが含まれています。彼の作品は、カンタベリー・ロックのファンだけでなく、幅広い音楽ファンにとって必聴と言えるでしょう。

主なアルバム

ソフト・マシーン - The Soft Machine（1968年）
ヴォリューム2 - Volume Two（1969年）
3 - Third（1970年）
4 - Fourth（1971年）
ジ・エンド・オブ・アン・イアー - The End Of An Ear（1970年）
ロック・ボトム - Rock Bottom（1974年）
ルース・イズ・ストレンジャー・ザン・リチャード - Ruth Is Stranger Than Richard（1975年）
ナッシング・キャン・ストップ・アス - Nothing Can Stop Us（1981年）
オールド・ロットンハット - Old Rottenhat（1985年）
ドンデスタン - Dondestan（1991年）
シュリープ - Shleep（1997年）
クックーランド - Cuckooland（2003年）
* コミックオペラ - Comicopera（2007年）

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