ニック・メイスン

ニック・メイスン：ピンク・フロイドの心臓、そして多彩な才能

ニック・メイスンは、1944年1月27日生まれのイギリス人ミュージシャン、ドラマー、そして音楽プロデューサーです。プログレッシブ・ロック・バンド、ピンク・フロイドの創設メンバーとして世界的に知られており、2019年には大英帝国勲章（CBE）を受章しました。ローリングストーン誌の「歴史上最も偉大な100人のドラマー」にも選出されるなど、そのドラミングは高い評価を受けています。

裕福な家庭と音楽への恵まれた環境

バーミンガムの裕福な家庭に生まれたニック・メイスン。父はドキュメンタリー映画の監督、母はクラシックピアニストという、音楽的な環境に恵まれた幼少期を過ごしました。この環境が、彼の音楽への関心を育み、後のキャリアに大きく影響を与えたことは想像に難くありません。

ピンク・フロイド結成と多岐にわたる活動

リージェント・ストリート・ポリテクニック（現ウェストミンスター大学）在学中に、後にピンク・フロイドのメンバーとなるロジャー・ウォーターズ、リチャード・ライトと出会い、バンドの母体となるグループを結成しました。ピンク・フロイドでの成功後、他のメンバーに先駆けてソロ活動を展開。その豊富な人脈を生かし、ダムド、ロバート・ワイアット、ゴング、スティーヴ・ヒレッジといった様々なミュージシャンのレコーディングやツアーに参加しています。ドラマーとしてだけでなく、プロデューサーやレコーディング・エンジニアとしても活動し、幅広い音楽制作に携わってきました。1981年には『空想感覚』、1985年にはリック・フェンとの共作『プロファイルス - ピンクの進化論』といったソロアルバムも発表しています。

ピンク・フロイドの活動とメンバーとの関係

ウォーターズとギルモアという、ピンク・フロイドを代表する二人のメンバー間の対立がバンドに影を落とす中でも、ニック・メイスンは常に中立的な立場を保ちました。両者との良好な関係を維持し、1980年代以降のソロツアーにも参加するなど、バンドの分裂後も彼らの活動を支え続けました。

1984年にはギルモアの、2002年にはウォーターズのツアーにゲスト参加し、メンバー間の和解にも貢献しました。2006年にはギルモアとライトとの共演も実現し、1980年代後半以降初めて3人が揃って演奏する機会となりました。ウォーターズの『狂気』完全再現ツアーにも複数回参加しており、このゲスト参加について、メイスン自身は「ギルモア側、ロジャー側、どちらで演奏しても何か欠けている」と語っています。これは彼のピンク・フロイドへの揺るぎない愛情と、メンバーへの深い理解を示す発言と言えるでしょう。

多彩な才能と活動の幅

近年では執筆活動にも取り組み、2004年にはピンク・フロイドのメンバーによる初の伝記本『Inside Out』を執筆しました。また、タイム誌への寄稿も行うなど、その活動は多岐に渡ります。大学で建築学を専攻していた経験を生かし、イラストやデザインにも長けており、ピンク・フロイドのアルバム『ピンク・フロイドの道』のジャケットデザインも手掛けています。

車への情熱と類まれな収集

大の車好きとしても知られ、ル・マン24時間レースへの参戦経験も持ちます。フェラーリコレクターとしても有名で、ジル・ヴィルヌーヴの愛車など貴重なコレクションを所有しており、それらの車をイギリスの自動車番組『トップ・ギア』に提供したこともあります。

ピンク・フロイド活動停止後と現在

ピンク・フロイドが2014年にオリジナルアルバム発表後、活動を停止した後も、ニック・メイスンは音楽活動を続けています。2018年には初期のピンク・フロイド曲を演奏するトリビュートバンド「ニック・メイスンズ・ソーサーフル・オブ・シークレッツ」を結成し、ワールドツアーを行いました。

ニック・メイスンは、類まれな音楽的才能、人脈、そして多様な興味関心を持つ、まさに稀有な存在と言えるでしょう。彼の今後の活動からも目が離せません。

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