ロボット・フォン

ロボット・フォン

ロボット・フォン、またはIPロボットフォンは、クマのぬいぐるみを模した外見を持つインターネット電話（IP電話）端末です。これは、東京大学と株式会社イワヤとの産学連携によって共同開発され、2003年11月に製品として市場に投入されました。

概要と機能

ロボット・フォンの最も特徴的な機能は、インターネット回線を介して離れた場所にいる相手と音声通話を行いながら、互いの持つロボットの動きをリアルタイムに連動させられる点にあります。例えば、通話中に自分のロボット・フォンを傾けたり動かしたりすると、通信相手のロボット・フォンもそれに応じて同じ動きを再現します。これにより、単なる音声だけでなく、ジェスチャーのような非言語的な情報も共有することが可能となり、より豊かなコミュニケーションを実現します。この音声と身体的な動きを同時に扱うアプローチは、マルチモーダル・インタフェースの一例として位置づけられます。

もし通信相手がロボット・フォン本体を持っていなくても、このシステムを利用する方法が用意されています。相手のパーソナルコンピュータに専用のアプリケーションソフトウェアをインストールすれば、アプリケーション内に表示されるクマのキャラクターを画面上で操作し、自分のロボット・フォンと動きを連動させることができます。

技術的背景

このロボット・フォンの根底にあるのは、東京大学教授である舘暲氏が提唱するバーチャルリアリティの概念であるRキューブ（リアルタイム・リモート・ロボティクス＝実時間・遠隔・ロボティクス）というコンセプトです。Rキューブは、遠隔地に存在するロボットをリアルタイムで操作し、あたかもその場に自分が存在しているかのような感覚（プレゼンス）を得ることを目指すものです。ロボット・フォンは、このRキューブの考え方を取り入れたコミュニケーション・ツールであり、いわゆるテレプレゼンスロボットの一種とも言えます。テレプレゼンスロボットとは、遠隔操作とロボット工学を組み合わせることで、物理的に離れた場所に「存在する」かのような体験を提供する技術を指します。

開発経緯と産学連携

ロボット・フォンの製品化は、東京大学の有する先進的なロボット技術と、おもちゃメーカーであるイワヤの製品開発・製造能力が結びついた産学連携の成功事例です。特に、遠隔操作を発展させた最先端のロボット技術は東京大学の舘研究室によって研究開発されたものです。実際の製品開発においては、イワヤの中野殖夫氏と東京大学の関口大陸氏が中心的な役割を果たしました。この両者、すなわち大学の研究者と企業の開発者を繋ぎ、共同プロジェクトを推進する上で重要な役割を担ったのが、東京大学先端科学技術研究センターの中野八千穂氏です。

製品化とメディアでの紹介

前述の通り、ロボット・フォンは2003年11月に株式会社イワヤから製品として発売されました。その革新的なコンセプトと技術は当時注目を集め、テレビ番組でも取り上げられています。例えば、2003年12月16日に放送されたテレビ東京のドキュメンタリー番組「日経スペシャル ガイアの夜明け」では、「シリーズ日本の知を問う 2 大学は宝の山だ！！ 〜産学連携が未来のヒットを創る〜」と題された回で、産学連携の一例としてロボット・フォン開発プロジェクトが紹介されました。

補足事項

なお、2016年以降にシャープ株式会社が販売しているモバイル型ロボット「RoBoHoN（ロボホン）」もまたユニークなロボットデバイスですが、クマのぬいぐるみ型であるロボット・フォンとは直接的な関係はありません。両者は異なる企業によって、異なる時期に開発・販売された製品です。

関連用語

舘研究室
イワヤ
Rキューブ
テレプレゼンスロボット

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