ロマンス (雑誌)

ロマンス ―昭和の国民的娯楽読物雑誌

『ロマンス』は、昭和21年に創刊された日本の娯楽雑誌であり、その名は日本の読者に広く親しまれました。この雑誌は、当初はロマンス社より発行され、最盛期には80万部を超える発行部数を誇りました。しかし、経営面の問題から1950年に活動を停止し、その後『ロマンス出版社』と『モダン・ロマンス』という別の出版社に分裂しました。

創刊の背景

創刊にあたっては、講談社の『婦人倶楽部』の編集部で大衆文芸を担当していた熊谷寛が中心的に動きました。熊谷は、戦後の混乱期に「東京タイムズ」の立ち上げに関わり、その後1946年6月に東京タイムズ社の出版局から『ロマンス』を創刊します。創刊号には著名な作家たち、織田作之助、立野信之、菊田一夫、浜本浩らの作品が掲載され、64ページ、定価4円50銭で販売され、10万部を一気に売り切る成功を収めました。

雑誌の人気の確立

以降、雑誌は急速に人気を博し、特に小島政二郎の恋愛小説「三百六十五夜」が連載されると、読者の関心が高まりました。この小説は映画化され、主題歌も大ヒットすることで、雑誌自体の人気も高まりました。また、志村立美や岩田専太郎の挿絵が巻頭に掲載され、物語詩としての質も高めました。

1947年からは菊池寛の連載が始まり、当時としては破格の原稿料が支払われました。経済的なインフレの中で、ロマンス社は様々な有名作家に起用することで、さらなる購読者を集めていきました。

発行部数の急増

1947年には40万部、1948年には82万部に達し、『ロマンス』は国民的な存在となりました。サブ誌として『婦人世界』や『少年世界』、翻訳雑誌の『トルーストーリー』『フォトプレイ』を発行し、業界内での地位を確立しました。そこでの成功に伴い、ロマンス社には好循環が生まれ、社屋も銀座に移転し、社員にはボーナスが支給されることもありました。

経営の厳しさと分裂

しかし、急速な売上増加の舞台裏では、経営は次第に厳しさを増していました。1949年、経済の混乱に伴い出版界全体が影響を受け、ロマンス社も資金に苦しむこととなりました。これにより原稿料の支払い遅延が発生し人気作家の離脱が相次ぎ、ついには1950年に破産へと至ります。

破産後、筆頭債権者たちの争いから、ロマンス社は『ロマンス出版社』と『モダン・ロマンス』という二つの新会社に分かれることになりました。熊谷寛は状況が厳しくなり全財産を失い、『婦人世界』を持って新たな婦人雑誌に挑戦するも1年で終了します。

最後の結末

その後、ロマンス出版社では『ロマンス』や『婦人世界』などの雑誌を発行し続けましたが、最終的には1956年に終了。『モダン・ロマンス』も同じく1951年に終了し、ロマンス社のブランドは次第に忘れ去られることとなりました。ロマンスという名の雑誌は、昭和の社会文化に名を刻み、現在でもその影響は語り継がれています。

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