岩田専太郎

岩田専太郎について

岩田専太郎（いわた せんたろう、1901年6月8日 - 1974年2月19日）は、日本の著名な画家であり美術考証家です。特に連載小説の挿絵制作に多く携わり、独自の「専太郎張り」と称される美人画スタイルを確立しました。彼の作品は多くの雑誌や書籍の表紙に使用され、その作品群は昭和の挿絵の第一人者として広く認識されています。妹は女優の湊明子であり、彼の芸術活動においても影響を与えた存在です。

生い立ちと教育

岩田は、東京都浅草区黒船町に生まれました。彼の家族は印刷業に従事しており、絵を描く環境に恵まれていました。幼少の頃から絵に対する才能が顕著に表れ、妹の湊明子の証言によれば、彼が尋常小学校に入学した際には、校舎の講堂に彼の作品が展示されていたそうです。彼は旧制尋常小学校を卒業後、菊池契月や伊東深水の指導を受けながら技術を磨きました。

キャリアの始まり

1919年、岩田は十代後半に差しかかると、雑誌『講談雑誌』（博文館）のために挿絵を描き始めます。その後、1923年に関東大震災に遭い、大阪へ移住し、プラトン社で専属画家として働くことになりました。彼は同年創刊された『女性』や『苦楽』で挿絵を手がけ、特に永井荷風の作品の挿絵によって名声を高め、「モダン浮世絵」と称されました。

東京での活動

1926年、岩田は東京へ戻り、滝野川区田端に居を構えました。この地域は文士たちが集い、文芸が栄えた「田端文士村」として知られていました。彼は『大阪毎日新聞』で吉川英治の『鳴門秘帖』の挿絵を手掛け、名声を確立しました。1937年には、映画『人情紙風船』の美術考証を担当し、その後1939年の映画『その前夜』でも美術考証を行うなど、映画界でも活躍しました。

戦後の活動と受賞

戦争の混乱期には、妹と共に岩手県へ疎開し、食糧不足に苦しんだ際には、舞踊家の花柳徳兵衛と共に村々を回ってされた慰問活動に参加しました。終戦後は東京に戻り、長谷川一夫の家に身を寄せました。1954年には、彼の挿絵や表紙画が高く評価され、第2回菊池寛賞を受賞しました。彼の多くの作品は、画集として出版され、後世にもその芸術が引き継がれています。

主な作品と影響

岩田専太郎の作品は、絵画や挿絵、版画に広がり、特に美人画のスタイルで知られています。美術館には数多くの収蔵品があり、『小休止』（1944年）や『特攻隊内地基地を進発す(二)』（1945年）などが評価されています。また、彼は挿絵のジャンルでも重要な役割を果たし、吉川英治の作品や松本清張の連載にまでその影響を与えました。

終わりに

1974年に亡くなるまでの間、岩田は日本の美術界において重要な地位を占め続けました。彼の技術、感性、そして独自のスタイルは、今もなお多くのアーティストに影響を与えており、岩田専太郎の名は日本の芸術史に輝く存在として刻まれています。

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