ロタール2世

ロタール2世は、中部フランク王ロタール1世の次男として生まれ、855年に父の死後、フリースラントから北部ブルグントに及ぶ広大なロタリンギア王国の王位を継承しました。この王国は、父ロタール1世が自身の領土を息子たちに分割した際に成立したもので、ロタール2世はアーヘンを含む重要な地域を領有することとなりました。

863年には、弟シャルルが後継者を残さずに死去したため、ロタール2世は兄の皇帝ロドヴィコ2世と協力し、シャルルの領土を分割しました。この結果、ロタール2世はリヨン、ヴィエンヌ、グルノーブルといった司教管区を手に入れ、王国の勢力を拡大しました。

ロタール2世の治世における大きな問題は、結婚と後継者に関するものでした。彼は855年にアルル伯ボソ3世の娘テウトベルガと結婚しましたが、正妻との間に子供を授かることができませんでした。そのため、ロタール2世は愛妾ワルトラーダと結婚しようと画策し、テウトベルガに近親者との不義密通を告白させ、離婚を試みました。しかし、この離婚はローマ教皇ニコラウス1世の強い反対に遭い、実現には至りませんでした。教皇は、ロタール2世の行動を道徳的に非難し、彼の離婚を認めませんでした。

その後、ニコラウス1世が死去し、後任の教皇ハドリアヌス2世との間で、兄ロドヴィコ2世夫妻の仲介によって離婚問題の再審議が行われることになりました。しかし、再審議が行われる前の869年8月、ロタール2世はピアツェンツァで急逝しました。彼の死は、メルセン条約締結のきっかけとなりました。この条約は、ロタール2世の死後、ロタリンギア王国が東西フランク王国によって分割されることを定めたもので、中世ヨーロッパの政治地図に大きな影響を与えました。

ロタール2世は、正妻との間に子供を儲けることはできませんでしたが、愛妾ワルトラーダとの間に1男3女の庶子をもうけました。息子ウーゴはアルザス公となり、娘ギーゼラはフリースラント公ゴドフリドと結婚、ベルタはアルル伯テオバルド、その後トスカーナ辺境伯アダルベルト2世と結婚、エルメンガルダは聖ジャスティン修道院の修道女となりました。

ロタール2世の治世は、彼の個人的な問題と政治的な問題が複雑に絡み合った時代でした。ロタリンギアという地名は、ラテン語の「Lotharii Regnum」（ロタールの王国）に由来し、彼がこの地を治めた歴史を今に伝えています。フランス語ではロレーヌ（Lorraine）、ドイツ語ではロートリンゲン（Lothringen）として知られるこの地域は、彼の名前を冠し、ヨーロッパ史における重要な場所の一つとなっています。

参考文献:

成瀬治 他 編 『世界歴史大系 ドイツ史 1』 山川出版社、1997年
柴田三千雄 他 『世界歴史大系 フランス史1』 山川出版社、1995年
瀬原義生 『ドイツ中世前期の歴史像』 文理閣、2012年

関連事項:

メルセン条約

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