ロングタームサポート

ソフトウェアの長期サポート（LTS）と短期サポート（STS）

ソフトウェアのリリースには、長期サポート（Long-Term Support, LTS）と短期サポート（Short-Term Support, STS）という2つの主要なアプローチがあります。LTSは、ソフトウェアの安定版を通常よりも長期間にわたって保守する製品ライフサイクルポリシーであり、特にオープンソースソフトウェアでよく用いられます。

一方、STSは、ソフトウェアの標準版のサポートポリシーを指し、LTS版と比較してサポート期間が短く設定されています。STS版は、LTS版には含まれない新しい機能が提供される場合があります。これは、LTS版が安定性と互換性を重視するのに対し、STS版は最新の機能を提供することを優先するためです。

LTSの特徴

LTSは、ソフトウェア開発とリリースライフサイクルに信頼性工学の概念を適用したものです。LTSの主な目的は、ソフトウェアのメンテナンス期間を延長し、信頼性を高めることです。これにより、ソフトウェアの更新（パッチ）の種類と頻度を調整し、ソフトウェア展開に伴うリスク、コスト、および中断を削減できます。

重要な点として、LTSにおける「サポート」は、単なるテクニカルサポートを意味するのではなく、ソフトウェアの保守期間全体を指します。LTS版のリリース開始時には、機能フリーズが実施され、新しい機能の導入は基本的に行われません。バグや脆弱性の修正パッチは提供されますが、後戻りバグを引き起こす可能性のある変更は避けられます。提供されるパッチは、個別配布、メンテナンスリリース、ポイントリリース、サービスパックとして提供されます。

サポート期間が終了すると、製品は寿命を迎え、またはサポートレベルが低下します（セキュリティパッチのみの提供など）。

LTSの理論的根拠

ソフトウェアのアップグレードを検討する際、リスクとコストは重要な判断材料です。ソフトウェア開発者が新機能を追加したりバグを修正したりする過程で、新しいバグが導入されたり、既存の機能が破損する可能性があります。このような問題は後戻りと呼ばれます。ソフトウェアの発行者や保守者は、メジャーアップデートのリリース頻度を減らすことと、ユーザーに代替のアップデートバージョンをテストさせることで、後戻りのリスクを軽減します。

LTSソフトウェアは、これらのリスク軽減戦略に対応します。LTS版は、STS版と並行して提供され、STS版のメジャーアップデートが頻繁にリリースされることで、LTSユーザーは、変更が十分な品質であると判断された場合にLTS版に取り込まれる可能性のある変更を事前に確認できます。

古いバージョンのソフトウェアの使用は、アップグレードに伴うリスクを回避できる一方、サポートが終了するリスクがあります。LTSは、ソフトウェアが一定期間保守され、提供される更新によって後戻りバグのリスクが大幅に減少することをユーザーに保証することで、この問題に対処します。

LTSソフトウェアの保守者は、ITリスクが低いか、リスクを軽減する更新（セキュリティパッチなど）のみを公開します。これにより、LTSソフトウェアのパッチは、インストールしない場合よりもインストールする方が安全であるように設計されています。

LTS版を持つソフトウェアの例

多くのプロジェクトでは、すべてのリリースに対して長期サポートを提供していますが、ここでは、通常のリリースサイクルに加えて特定のLTSバージョンを持つものをいくつか紹介します。

Ubuntu: LTSバージョンは、デスクトップ版とサーバー版で5年間のサポートが提供されます。
Debian: Debian 6.0以降、すべてのバージョンにLTSサポートが追加され、合計で約5年間のサポート期間が提供されます。
* CentOS: すべてのリリースに対して長期サポートが提供されます。

LTSとSTSの比較

まとめ

LTSとSTSは、それぞれ異なるニーズに対応するソフトウェアサポートのアプローチです。LTSは、安定性と信頼性を重視するユーザーに適しており、STSは、最新の機能と頻繁なアップデートを求めるユーザーに適しています。どちらのアプローチを選択するかは、ソフトウェアの利用目的や環境によって異なります。

この情報が、ソフトウェアのLTSとSTSに関する理解を深める一助となれば幸いです。

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