ロンサム・ウェスト

ロンサム・ウェスト

『ロンサム・ウェスト』はアイルランド系イギリス人の劇作家マーティン・マクドナーによって書かれた戯曲であり、彼のリーナン三部作の一部として位置づけられています。この作品は、アイルランド西部のリーナンの町を舞台として、ショッキングな事件や殺人に焦点を当てています。物語は、常に口論する兄弟のコールマンとヴァレン・コナーを中心に展開されます。

登場人物

• - コールマン・コナー: ヴァレンの兄
• - ヴァレン・コナー: コールマンの弟
• - ウェルシュ神父: アルコール依存症気味のカトリックの聖職者
• - ガーリーン: 近所の少女

あらすじ

冒頭から、コールマンとヴァレン兄弟は、父親のショットガンの「事故」による死の後、互いに反発しながら生きています。ヴァレンは宗教的な装飾品やポティーンといったお酒にしか興味を示さず、コールマンは無料の食べ物に目がない様子で、葬儀の席でも奪うことに精を出します。物語は、兄弟の確執と相互の影響を描き出しています。

ある日、ヴァレンは自殺した警官トマス・ハンロンの死体を湖から引き揚げる作業をウェルシュ神父と一緒に手伝うことに。コールマンはその後を追うふりをしつつ、悪戯にヴァレンのプラスティックの聖像を壊すという行動に出ます。こうした兄弟の関係性は、ウェルシュ神父が懸命に修復を試みるも、ほとんど効果を見ないという滑稽さを伴っています。

物語は進むにつれて、コールマンが父親を撃った真相や、ヴァレンがそれをカバーするためのウソのアリバイ作りを手伝う場面が明らかになります。いずれも兄弟間での感情は冷徹そのもので、お互いに対する深い支配や裏切りが蔓延しています。さらには、ケンカが頻発し、些細なことに対して激しく争う様子が描かれ、二人の関係はますます複雑になっていきます。

ウェルシュ神父の影響と自殺

ウェルシュ神父は、彼らの和解を願い、手紙を書いて自らの魂を賭けるほどですが、悲劇的なことに彼は湖で溺れて自殺してしまいます。この出来事がきっかけとなり、コールマンとヴァレンは神父の手紙を読んだ後、互いに過去の過ちを告白し始めます。しかし、その告白は友愛を育むものではなく、逆に更なる争いを巻き起こす要因となるのです。

最後の争い

特に印象的なのは、コールマンがヴァレンの犬の耳を切り落としたことを告白するシーンです。この衝撃的な過去の行動は、兄弟の間の争いを決定づける結果となり、彼らの何気ない口論がただの喧嘩ではないことを、観客に強烈に印象づけます。最終的に、彼らは兄弟の関係が一向に良好にならないことを認め、自らの状況を受け入れるのです。

上演と評価

『ロンサム・ウェスト』は1997年に初演され、後にロンドンやアメリカのブロードウェイでも上演されました。日本では2002年から翻訳版が上演され、多くの評判を得ました。

マーティン・マクドナーのこの作品は、個々の人間の葛藤を描く一方で、広いコミュニティとしての問題設定も行うため、徹底した悲劇性を持っています。兄弟の間の愛憎劇は、軽妙でありながらも深く複雑な人間関係を際立たせており、観客に強いメッセージを伝えています。

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