ロンドンのオオカミ男

ウォーレン・ジヴォンによって1978年に発表された楽曲「ロンドンのオオカミ男」（Werewolves of London）は、そのユニークな誕生背景で知られています。

この楽曲が誕生したきっかけは、エヴァリー・ブラザーズのフィル・エヴァリーがウォーレン・ジヴォンに語ったちょっとした冗談に遡ります。フィル・エヴァリーは、1935年の狼男映画『倫敦の人狼』（原題：Werewolf of London）をテレビで観た後、ジヴォンに「ロンドンの狼男というタイトルで、皆が踊って騒げるような曲を書いてみたらどうだろう」と提案したのです。この軽い提案に対し、ジヴォンはリロイ・P・マリネル、そしてワディ・ワクテルと共にわずか15分で曲を書き上げました。その場に居合わせたジヴォンの当時の妻、クリスタルが急いで歌詞を書き留めたと言います。これは1975年の出来事でした。

当初、このような突飛なテーマを持つ楽曲が真剣に受け止められることはほとんどありませんでした。しかし、シンガーソングライターのジャクソン・ブラウンは歌詞を読んでその可能性を感じ取り、1975年の自身のツアーでカバーしました。また、ボブ・ディランのローリング・サンダー・レヴューに参加していたT・ボーン・バーネットも、同年秋の同レヴューでこの曲を披露しています。

ジヴォンはその後、ジャクソン・ブラウンのプロデュースの下、1976年5月にセカンドアルバム『Warren Zevon』を発表しますが、不思議なことにこの楽曲は収録されませんでした。

転機が訪れたのは1977年。ジヴォンがサードアルバムの制作に取りかかった際、ようやく「ロンドンのオオカミ男」が取り上げられることになったのです。しかし、そのスタジオでの録音作業は驚くほど難航を極めました。曲の雰囲気を掴むのに苦労し、少なくとも7組もの異なる演奏メンバーによって録音セッションが重ねられたといいます。ギタリストのワディ・ワクテルは後に「これほどまでに曲の感触を掴むのに手こずった経験は他になかった」と述懐しています。最終的に採用されたバージョンは、ウォーレン・ジヴォンがピアノとボーカル、ワディ・ワクテルがギター、フリートウッド・マックのジョン・マクヴィーがベース、同じくミック・フリートウッドがドラムスという、強力な4人の演奏家によってレコーディングされました。楽曲はト長調で、使用されているコードはG、C、Dのわずか3つのみというシンプルな構成です。

この楽曲は、1978年1月18日に発売されたジヴォンのサードアルバム『Excitable Boy』に無事収録されました。当初、ジヴォン自身はシングルカット用の曲として「Johnny Strikes Up the Band」や「Tenderness on the Block」を考えていましたが、レコード会社は「ロンドンのオオカミ男」を強くプッシュし、同年3月にシングルとしてリリースされました。

その結果、楽曲は商業的に大きな成功を収めます。同年5月13日から5月20日にかけて、ビルボードのHot 100チャートで2週連続21位を記録しました。これはウォーレン・ジヴォンのキャリアにおいて、ビルボードのHot 100で唯一トップ40入りを果たした記念すべき楽曲となりました。

1980年12月に発売されたライブアルバム『Stand in the Fire』には、迫力あるライブバージョンが収録されており、この楽曲がライブでも重要なレパートリーであったことが伺えます。

主な演奏者

• - ウォーレン・ジヴォン - ピアノ、ボーカル
• - ワディ・ワクテル - ギター
• - ジョン・マクヴィー - ベース
• - ミック・フリートウッド - ドラムス

主なカバー・バージョン

• - グレイトフル・デッド (1978年のライブ。2016年発売のライブアルバム『Red Rocks: 7/8/78』収録)
• - フレイミン・グルーヴィーズ (1979年のアルバム『Jumpin' in the Night』収録)
• - マグノリア・エレクトリック・カンパニ― (2005年のEP「Hard to Love a Man」収録)
• - コズミック・ノイズ (2011年のアルバム『A Monstrous Halloween』収録)
• - アポロジェティックス (2016年のアルバム『Only a Glorified Cover Band』収録。パロディ作品「There Are Wolves Among Us」として)

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