ロンドン条約 (1972年)

ロンドン条約（1972年）とは

ロンドン条約（1972年）は、正式名称を「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」といい、海洋環境の保護を目的とした国際条約です。この条約は、陸上から発生する廃棄物の海洋投棄や、洋上での焼却処分などを規制することで、海洋汚染の防止を目指しています。ロンドンダンピング条約、ロンドン海洋投棄条約とも呼ばれます。

条約の歴史

1972年11月に国際海事機関（IMO）のロンドン本部で採択され、1975年8月に発効しました。当初は81か国が締約していましたが、その後も改正や議定書の採択を経て、内容の強化と整備が進められています。日本は1973年に署名し、1980年10月に批准しました。国内法としては、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」と「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」が関連します。

条約の内容

ロンドン条約は、前文、本文22カ条、末文、3つの附属書から構成されています。主な規定は以下の通りです。

附属書I：有害物質（有機ハロゲン、水銀、カドミウム、持続性プラスチック、廃油、放射性物質、生物兵器・化学兵器など）およびこれらを含む廃棄物の投棄を禁止。
附属書II：特定の物質（ひ素、鉛、銅、亜[[鉛]]など）や、漁業や航行の妨げになる可能性のある廃棄物など、特別の注意を要するものの投棄には事前の許可が必要。
附属書III：許可を与える際の考慮事項として、廃棄物の特性、投棄場所の特性、一般的な条件などを規定。

条約では、「海洋」とは、国の内水を除くすべての海域を指します。附属書Iでは、海洋において急速に無害化され、食用海洋生物の味や人畜の健康を損なわない物質は適用除外、国際原子力機関が定義する免除レベルを超える放射能を有する物質は適用除外となります。また、海洋における焼却も規制されており、産業廃棄物や下水汚泥の焼却は原則禁止です。

1996年議定書

1996年11月に採択された議定書は、2006年3月24日に発効しました。この議定書では、廃棄物の海洋投棄を原則禁止とし、例外的に許可されるものを附属書Iに限定する「リバースリスト方式」を採用しています。これにより、従来の条約よりもさらに厳格な規制が導入されました。

附属書I：投棄が検討可能な廃棄物（浚渫物、下水汚泥、魚類の残さ、船舶などの人工海洋構築物、不活性な地質学的無機物質、天然に由来する有機物質など）を規定。
附属書II：廃棄物評価フレームワーク（WAF）に基づいた、投棄を検討する際の詳細な評価手順を規定。
附属書III：仲裁裁判所による締約国間の紛争の仲裁に関する規定。

議定書では、予防的取組みや汚染者負担原則も明記され、海洋環境保護に対する姿勢がより明確化されています。また、二酸化炭素の海底下地層貯留も、条件付きで投棄を検討できる品目に追加される予定です。

廃棄物評価ガイドライン(WAG)

WAGは、議定書には含まれていないものの、締約国の制度構築を支援するために作成されたガイドラインです。WAF（附属書II）の実行ガイダンスとして、一般WAGと品目WAGの2種類があります。

一般WAG：投棄を検討できる廃棄物の一般的な評価ガイドライン。
品目WAG：附属書Iに規定された廃棄物ごとの特性を踏まえた評価ガイドライン。

これらのガイドラインは、投棄場所の選択や潜在的な影響の検討、監視計画の策定など、詳細な手順や考慮事項を規定しており、より適切な廃棄物管理を促すためのものです。

国内法への影響

ロンドン条約とその議定書は、日本の国内法にも大きな影響を与えています。「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では、し尿や浄化槽汚泥の海洋投入処分が禁止され、一般[[廃棄物]]の海洋投入処分は全面的に禁止されました。また、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」では、浚渫土砂の海洋投入処分に環境大臣の許可が必要になるなど、海洋環境保護に対する規制が強化されています。

まとめ

ロンドン条約は、海洋汚染防止のための国際的な枠組みとして重要な役割を果たしています。1996年の議定書によって、より厳格な規制が導入され、海洋環境の保全がより一層重視されるようになりました。締約国は、条約や議定書、ガイドラインに基づいて、適切な廃棄物管理を行い、海洋環境の保護に努める必要があります。

もう一度検索