ローウェル・フルソン

ローウェル・フルソン（Lowell Fulson、1921年 3月31日 - 1999年 3月7日）は、ウェスト・コースト・ブルースのスタイルを確立し、その発展に大きく貢献したアメリカ合衆国の偉大なブルース・ミュージシャンです。ギタリスト、シンガー、そしてソングライターとして多岐にわたる才能を発揮し、T-ボーン・ウォーカー以降の世代において、このジャンルの最重要人物の一人と目されています。契約上の事情から、「Lowell Fullsom」あるいは「Lowell Fulsom」といった異なる名義でレコーディングを行った時期もありました。

生い立ちと初期

フルソンはオクラホマ州アトカにあるチョクトー族保留地で生を受けました。彼の両親はメイミーとマーティンのフルソン夫妻でした。フルソン自身によると、父方の先祖にはチェロキー族がいた一方で、チョクトー族の血も受け継いでいたといいます。幼少期に父親を突然の暴力事件で失った後、彼は母親や兄弟と共にオクラホマ州内のクラリータへ移り住み、コールゲートの学校に通いました。

音楽への道は、18歳でオクラホマ州エイダに移住したことから本格的に始まります。1940年には、テキサス州出身のブルースマン、アルジャー・"テキサス"・アレクサンダーと共に数ヶ月間活動しました。その後、カリフォルニア州へと拠点を移し、自身のバンドを結成しました。このバンドには、後にジャズ界の巨匠となる若きレイ・チャールズや、テナー・サクソフォーン奏者のスタンリー・タレンタインが参加しており、才能あふれるミュージシャンが集まる場所となりました。しかし、彼のキャリアは一時中断を余儀なくされます。1943年にアメリカ海軍に召集され、1945年まで兵役に就きました。

音楽活動と成功

兵役を終えたフルソンは音楽活動を再開し、精力的にレコーディングを行います。1940年代にはスウィングタイム・レコード、1950年代にはチェス・レコード傘下のチェッカー・レコード、1960年代にはケント・レコード、そして1980年代から90年代にかけてはラウンダー・レコード傘下のブルズアイ・ブルースなど、様々なレーベルから作品を発表しました。彼のソングライターとしての才能は特に高く評価されており、後世に残るブルースのスタンダード曲を数多く生み出しました。

彼の作曲した楽曲の中には、B.B.キングにとって初のヒット曲となった「3 O'Clock Blues」や、ブルースの定番として多くのアーティストにカバーされた「Reconsider Baby」があります。また、ジミー・マクラクリンとの共作である「Tramp」も、彼の代表曲として非常に有名です。1965年にリリースした「Black Nights」は久々のヒットとなりましたが、その2年後の1967年に発表された「Tramp」はそれを上回る大ヒットを記録し、フルソンを再びR&B界のスターへと押し上げました。彼の弟であるロバート・フルソンもミュージシャンであり、1966年には元レイレッツのメンバー、マージー・ヘンドリックスと結婚し、1968年に離婚するまでの間、ローウェルと共にステージに立つこともありました。

晩年においても彼の存在感は揺るぎませんでした。1993年には、カリフォルニア州オークランドのパラマウント劇場で開催された「カリフォルニア・ブルース：スウィングタイム・トリビュート」と銘打たれた豪華なショーに出演し、ジョニー・オーティス、チャールズ・ブラウン、ジェイ・マクシャン、ジミー・ウィザースプーン、ジミー・マクラクリンといった錚々たる顔ぶれと共に観客を魅了しました。彼の最後のレコーディングは、1999年にアトランティック・レコードからリリースされたジミー・ロジャーズのアルバム『The Jimmy Rogers All-Stars: Blues, Blues, Blues』に収録された、ロジャーズとのデュエット曲「Every Day I Have The Blues」でした。

死去と遺産

ローウェル・フルソンは1999年 3月7日、カリフォルニア州ロングビーチでその生涯を閉じました。享年77歳でした。彼の長年のパートナーであったティナ・メイフィールドによると、死因は腎不全、糖尿病、うっ血性心不全といった複数の疾患による合併症でした。フルソンには4人の子供と13人の孫がいました。彼はカリフォルニア州イングルウッドにあるイングルウッド・パーク墓地に静かに眠っています。

フルソンがブルース音楽に残した功績は計り知れません。彼は数々の栄誉に輝いています。

1993年：ブルースの殿堂入りを果たす。
同年、代表曲の一つである「Reconsider Baby」が、ブルースの殿堂のブルース・レコーディングの古典（シングル部門）に選出される。
同年、アルバム『Hold On』がブルース音楽賞の年間トラディショナル・アルバム賞を受賞。
同年、リズム・アンド・ブルース・ファウンデーションよりパイオニア賞が贈られる。
1995年：アルバム『Them Update Blues』がグラミー賞の最優秀トラディショナル・ブルース・アルバム賞にノミネートされる。
同年、「Reconsider Baby」がロックの殿堂が選定する「ロックンロールを形作った500曲」の一つに選ばれる。
* 2010年：アルバム『Hung Down Head』が、ブルースの殿堂のブルース・レコーディングの古典（アルバム部門）に選出される。

ローウェル・フルソンは、その洗練されたギターワークと表現力豊かな歌声、そして時代を超えて愛される楽曲によって、ウェスト・コースト・ブルースのスタイルを確立し、多くの後進ミュージシャンに影響を与え続けました。彼の音楽は、今なお世界中のブルースファンに聴き継がれています。

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