ローズウッド (クスノキ科)

ローズウッド（Rosewood）とは

ローズウッド（学名：Aniba rosaeodora）は、南米原産のクスノキ科の常緑樹です。別名としてパウローサ、パウロサ、ボアドローズとも呼ばれますが、これらの名称は他の樹種にも使われることがあります。ローズウッドから得られる精油は、甘く、ややウッディでフローラルスパイシーな香りが特徴で、香料やアロマテラピーに利用されてきました。しかし、その希少性から、現在ではワシントン条約によって国際的な取引が規制されています。

ローズウッドの分類と誤解

ローズウッドの学名としてAniba rosaeodoraが一般的に用いられますが、実際には単一種ではなく、いくつかの近縁種をまとめた総称であるとする分類もあります。また、マメ科のツルサイカチ属の樹木もローズウッドと呼ばれることがありますが、これらは精油の抽出には用いられません。

ローズウッドの利用

最初に利用されたローズウッドはギアナ産のものでした。マホガニーに似た重く硬い材質と、バラのような香りを持つ精油が珍重され、家具や日用品の材料としても利用されました。ギアナからのローズウッド精油はカイエンヌ油とも呼ばれ、主成分は(R)-リナロールでした。この(R)-リナロールの慣用名であるリカレオールは、現地の呼び名に由来するとされていますが、実際には別の植物を指している可能性も指摘されています。

その後、ブラジルのマウエス近郊でもローズウッドの生産が始まりましたが、ギアナ産とは種が異なり、精油の品質も異なっていました。そのため、当初は市場に受け入れられませんでしたが、ギアナ産の乱獲による資源枯渇を背景に、ブラジル産のローズウッドが主流となっていきました。

ブラジル産のローズウッド精油の主成分もリナロールですが、ほぼラセミ体です。しかし、単独の木から得られる精油は光学活性体であり、木によってどちらの鏡像異性体が過剰であるか異なるとの報告もあります。

ローズウッド精油の歴史

1960年代前半までは、ローズウッドの精油はリナロールの重要な供給源でした。最盛期には年間500トンもの精油が生産されていましたが、リナロールの合成方法が確立されたことで、生産量は激減しました。現在では、高級香水やアロマテラピー向けに、ブラジルやパラグアイで細々と生産が行われています。

精油は、粉砕した木を水蒸気蒸留または熱水蒸留して抽出されます。甘く、ややウッディでフローラルスパイシーな香りは、主に香水用に利用されてきました。

ローズウッドの現状と課題

現在、ローズウッドはワシントン条約によって取引が規制されており、市場に出回っている「真正」とされる精油は、違法な取引によるものか、葉から抽出されたもの、あるいは合成品の可能性があります。そのため、代替品として、化学組成が近い安価なホーリーフ（クスノキ科）の精油が利用されるようになっています。

ローズウッド精油は、伝統医学での利用はありませんでしたが、アロマテラピーではニキビやしわ、免疫系の強化などに効果があるとされてきました。しかし、皮膚感作性があるため、皮膚に問題のある人には有害作用を及ぼす可能性があります。

ローズウッドの乱獲と資源枯渇は、持続可能な資源利用の重要性を示す教訓となっています。

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