ロータス・80

ロータス・80 (Lotus 80) とは

ロータス・80は、1979年のF1世界選手権においてチーム・ロータスが開発したフォーミュラ1カーです。このマシンは第5戦のスペインGPから第9戦のイギリスGPまでの間に使用されましたが、決勝を走ったのは主に第5戦のスペインGP、第7戦のモナコGP、第8戦のフランスGPの3レースに限られていました。ロータス・80のモノコックは3台製造されたものの、実際に使用されたのは2台のみで、現在も少なくとも2台が現存しています。

設計の背景

1978年シーズンを圧倒的な強さで終えたロータスは、さらなる進化を追求しました。コーリン・チャップマンが主導したこのプロジェクトでは、必要なダウンフォースを空気の流れ、すなわちグラウンド・エフェクトだけで確保し、前後のウィングを排除するという野心的な設計方針が採用されました。前年の79型ではサイドポンツーンの底にベンチュリー構造を設けていましたが、80型ではその思想が一層進化し、車体後端までを一つのベンチュリーとして扱う発想が取り入れられました。これによりダウンフォースの増加が期待されました。

特徴的なデザイン

実際の発表会では80型はウィングなしで披露され、そのフロントノーズの底面も広く空洞にされ、スライディングスカートが設置されました。また、低位置に取り付けられたウイング状の部品は、ダウンフォースの調整機能を持つ「トリムタブ」として機能しました。ウィングを排除するという大胆な試みは成功すれば大きなアドバンテージになる一方で、基本的な設計にミスがあった場合、致命的な結果につながるリスクも抱えていました。

技術的な挑戦

空力設計だけでなく、機械設計も特徴的です。予想される強大なダウンフォースに対抗するため、モノコックの一部にはチタンが使用されました。また、サスペンションのアッパーアームには肉厚のチタン材が採用され、軽量かつ高剛性を追求しました。こうした巧みな設計がなされたにもかかわらず、実際にサーキットを走行すると、風洞実験の結果と現実とのギャップが際立つことになります。

ポーパシングの問題

実際のテスト走行では、ベンチュリーカー特有の「ポーパシング」現象が発生しました。マシンの加速や減速時に縦揺れが生じ、姿勢が不安定になるため、ダウンフォースの増減も激しくなり、まともに走行できる状態ではなくなりました。前後にウィングを追加しても、ポーパシングの問題を効果的に解決できることはありませんでした。特にスライディングスカートが途中でカーブしていたことが、問題を複雑化させました。

改良とその後

改善策として、フロントサスペンションの設計を見直し、タイヤ位置を後方に移動させた改良型の80Mk.2が登場しました。しかし、各レースで試された結果、アンドレッティは最終的に初号車を選択することになりました。さらに、ポーパシングを押さえるためには、従来の車両に比べて5倍の硬さを持つスプリングが必要であることが判明しましたが、これによって80の開発は早期に終了しました。

結論

ロータス・80は、その革新的な設計と技術的な挑戦により、レースの歴史に名を刻むマシンとなりましたが、その実戦での使用においては多くの課題が残りました。しかし、チャップマンはこれにあきらめず、将来的なプロジェクトに向けた新たなアイデアや技術の開発を続けることになります。

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