ロープマジック

ロープマジックの世界

ロープマジックは、その名の通りロープを用いたマジックの総称です。クロースアップマジックから、サロンマジック、そしてステージマジックまで、幅広い場所で演じられる人気のジャンルです。ロープマジックを得意とするマジシャンには、マック・キング、ダロー、タバリーなどがおり、特にタバリーは1991年のFISMスイス大会でグランプリを獲得しています。

ロープマジックの歴史

ロープマジックの歴史は非常に古く、その起源は唐の時代にまで遡ります。仏教の百科事典である『法苑珠林』には、切られたロープが復活する奇術のような記述が見られます。また、17世紀にはロンドンで発行された『ホーカス・ポーカス・ジュニア』で本格的な解説がされています。

日本では、1729年の『和国たはふれ草』に、ロープ切りの演技が解説されており、その方法は現代のロープマジックでも用いられることがあります。このように、ロープマジックは長い歴史の中で、多くのマジシャンによって発展してきたのです。

代表的なロープマジック

ロープマジックには様々な種類があり、それぞれに独自の魅力があります。以下に代表的なものをいくつか紹介します。

ロープ切り

ロープ切りは、ロープマジックの基本とも言える現象です。1本のロープをハサミやナイフで切断し、それを元通りに1本のロープに戻します。このシンプルな現象の中に、数多くのバリエーションと技術が詰まっています。

ダリエル・フィツキーは、著書『Only 6 ways to restore a rope』でロープ切りの方法を6つに分類し、それらを組み合わせることで独自の演出が可能だと述べています。この書籍は、後に『Rope Eternal』と改題され、日本語訳版『ロープ奇術』も出版されましたが、現在は絶版となっています。

ロープが元に戻る過程にも様々な演出があります。

スライディングノット: 切断したロープの端同士を結びますが、結び目が移動し、最終的にロープが1本に戻る。
ジャンピングノット: ロープの端を結び、引っ張ると結び目が消えてロープが1本に戻る。
手で隠して復活: 切った箇所を手で隠し、おまじないをかけるとロープが元に戻る。
束ねて復活: 切ったロープを束ねたり丸めたりした後、おまじないをかけるとロープが復活する。
* 投げて復活: 切ったロープを投げてキャッチすると1本のロープに戻る。

ロープを3つ以上に切断して復活させる手順や、ハサミを使わずにロープを切断するマジック（フィンガーカット）も存在します。

3本ロープ

長さの違う3本のロープ（長・中・短）を用意し、それらが全て同じ長さになるというマジックです。その後、元の長さに戻したり、3本のロープを繋げて1本の長いロープにしたりするバリエーションもあります。リチャード・サンダースがDVD『Fiber Optics』で現代的なルーティンを解説しています。

リング・オン・ロープ

リングがロープに繋がったり、外れたりするマジックです。リングとロープの絡み合いが、不思議な現象を生み出します。

結び目を使ったマジック

ロープに結び目が出現したり、消えたり、移動したり、ロープから外れたりするマジックです。結び目の変化が、観客の目を惹きつけます。

カラーチェンジングロープ

ロープの色が変わるマジックです。結び目のマジックと組み合わせることで、結び目だけの色が変わるといった演出も可能です。

5本ロープ

5本のロープを持ち、そのうち1本を投げ捨てますが、気づくと手元には5本のロープがあります。この現象を何度も繰り返す、コメディ要素の強いマジックです。

チャイニーズロープ

3本のロープの端同士を結び、3つの輪を作りますが、いつの間にか繋がって1つの輪になります。その後、再びバラバラの輪に戻るというマジックです。

ロープ・ミラクル

2本のロープを首にかけ、その端を揉むと繋がります。首から外すと、2本のロープが輪になって繋がっているマジックです。オランダのリンクが原案とされています。

リンキング・ロープ

長短2本のロープを用意し、それぞれを輪にします。それらが、リンキング・リングのように繋がったり離れたりするマジックです。

ヒンズーロープ

別名インディアンロープとも呼ばれる、伝説的なマジックです。イブン＝バットゥータの『諸都市の新奇さと旅の驚異に関する観察者たちへの贈り物』に、14世紀の中国でインドの奇術師が実演したという記述があります。

その内容は、奇術師がロープに魔法をかけると、ロープが空高く昇っていきます。その後、弟子がロープを登り、見えなくなったところで悲鳴と共にバラバラになって落ちてきます。奇術師は、バラバラになった体を魔法で元に戻します。この奇術は、実際に演じられたのか、作り話なのか、真相は不明です。

ハワード・サーストンやヴィクトリア女王も、この奇術のトリック解明に挑戦しましたが、成功した者はいません。現代では、ジョン・キールがトリックの合理的な説明を試みたり、集団催眠術説を唱える者もいます。

20世紀に入り、ハワード・サーストンがステージ上でヒンズーロープを演じたり、Mr.マリックがテレビで現象の一部を再現したりしています。また、インドの奇術師イシャム・ディーンがロープを登るシーンを再現したこともあります。

まとめ

ロープマジックは、長い歴史の中で、様々なマジシャンによって発展してきた奥深いマジックです。シンプルに見える現象の中に、高度な技術や創意工夫が凝らされており、観客を魅了し続けています。歴史、バリエーション、演出など、様々な角度から楽しむことができるでしょう。

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