ローマガラス

ローマガラス：古代ローマの華麗なるガラス工芸

ローマガラスとは、ローマ帝政開始（紀元前27年）から帝国の東西分裂（395年）までの約5世紀にわたり、ローマ帝国内で製造・流通したガラス製品の総称です。別名「ローマングラス」とも呼ばれます。

ローマガラス発展の背景

ローマは紀元前4世紀から領土を拡大し、三頭政治を経て紀元前27年に帝政時代を迎えました。ヘレニズム時代の主要なガラス産地であったシリアやエジプトは、紀元前1世紀にローマ帝国の支配下に入り、ローマガラスは、この広大な帝国の基盤の上に発展しました。

紀元前1世紀半ばには、東地中海沿岸部で吹き技法が発明され、帝国内に急速に普及しました。この革新的な技術により、従来の鋳型や研磨の必要がなくなり、ガラス製造の効率が飛躍的に向上しました。

1世紀初頭には、吹き技法の応用として、型にガラスを吹き込む型吹き技法が開発されました。また、溶けたガラスを型に流し込んで成形する鋳造技法や、型押し垂下技法なども発達し、多様なガラス製品が生み出されました。

ローマガラスの特徴

ローマガラスには、ヘレニズム時代の影響が見られ、モザイク技法による装飾や、エジプトやギリシアの宗教的なモチーフが用いられました。一方で、鋳造技法や型押し垂下技法を活用し、エメラルドグリーン、ペルシアンブルー、ピーコックブルーなどの鮮やかな色彩の容器、特に竜骨状の器が制作されました。

ローマ人は鳥などのモチーフを好み、また、高級品としては、青地に白地のガラスを被せ、白地の部分を浮き彫り彫刻にしたカメオ・ガラスも製造されました。シドン近辺では、製作者名や標語などの銘を入れたガラス器も生産されました。

1世紀後半から、ガリア（フランス）やゲルマニア（ドイツ）などでは、戦車競技や剣闘士の試合を描いたサーカス杯と呼ばれるガラス器が登場しました。1世紀末頃からは、透明なガラスが好まれるようになり、吹き技法の発展に伴い、宙吹きの途中で凹凸のある型を使って紋様を施し、膨らませるモール装飾が多用されました。

透明ガラスの普及とともに、粉状の色ガラスを水や油に溶かして容器に彩色する技法や、エナメル彩色、コールド・ペインティングなども盛んに行われるようになりました。

ポンペイ遺跡とローマガラス

ポンペイ遺跡からは、ガラスの出土品と壁画の2つの形でローマガラスを知ることができます。フォルトゥーナ通りだけでも、壷250点、コップ30点、皿4点、大型コップ6点ものガラス器が出土しており、高級品から日用品まで様々な種類があります。

壁画には、果物が盛られた椀やゴブレット、液体が入ったスキフォス（両取っ手付の杯）や壷などが描かれており、当時の人々の生活を垣間見ることができます。

まとめ

ローマガラスは、ローマ帝国の繁栄を背景に、多様な技術と装飾様式を発展させた、古代の貴重な文化遺産です。その美しさや技術は、現代のガラス工芸にも影響を与え続けています。

参考文献

• - 中山公男監修『世界ガラス工芸史』美術出版社、2000年

関連項目

• - ガラス

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