ローマンエンパイア

ローマンエンパイアの生涯：幾多の困難を乗り越えた名馬

ローマンエンパイア (Roman Empire) 。1999年2月6日生まれの競走馬、種牡馬として、日本の競馬史にその名を刻んだ一頭です。2002年の京成杯（GIII）優勝がその主な功績として挙げられますが、その輝かしい経歴の裏には、数々の故障や苦難が隠されています。本書では、誕生から死に至るまで、ローマンエンパイアの生涯を詳細にたどり、そのドラマチックな人生を紐解いていきます。

誕生秘話：母ローマステーションとサクラローレルの奇跡

ローマンエンパイアの母、ローマステーションは酒井牧場で生産された競走馬でした。19戦1勝と華々しい成績ではありませんでしたが、引退後には「仔分け」という形で中島牧場へ生産が委託されます。酒井牧場と中島牧場との間では、初仔から4番仔までは酒井牧場の持ち分、それ以降は中島牧場に譲渡するという契約が結ばれていました。この契約通り、ローマステーションの初仔から4番仔は全て競走馬として勝利を収めるなど、順調な繁殖成績を収めました。しかし、ローマステーションの短く、短距離向きの体格に対し、中島牧場は、初年度はポリッシュパトリオット、2年目はジョリーズヘイローと、同じような体格の種牡馬を配合しました。これに対し、酒井牧場は異議を唱えます。そして、3年目にはローマステーションとは対照的な体格を持つサクラローレルを選定。この配合は酒井牧場からも好評を得ました。

そして1999年2月6日、サクラローレルとの交配から、ローマンエンパイアが誕生します。予想通り、サクラローレル譲りの長く伸びやかな体躯を持つ牡馬でした。この時点で、将来の活躍が期待されたことは言うまでもありません。

幼駒時代から競走馬時代へ

ターファイトクラブにて会員募集が行われ、総額2300万円、100口という募集枠は、募集開始早々に満口となる人気ぶりでした。1歳9か月で中島牧場を離れ、育成牧場であるチェスナットファームへ移動します。

その後、[日本中央競馬会]所属となり、栗東トレーニングセンターの古川平調教師の管理馬として、2001年12月にデビュー。新馬戦、さざんか賞と連勝し、オープン入りを果たします。新馬戦ではチアズシュタルク、さざんか賞ではテレグノシスを相手に圧勝。この時点で、皐月賞で人気を集める有力馬であることが示唆されました。

2002年、東京競馬場の京成杯では、ヤマニンセラフィムと人気を二分する展開に。レースでは、先に抜け出したヤマニンセラフィムを大外から追い込み、際どい勝負の末、1着同着という結果に。続く弥生賞では、ヤマニンセラフィムとの再戦となり、逃げたバランスオブゲームを捕らえ切れず2着に終わります。皐月賞では、タニノギムレットら強力なライバルたちに阻まれ、14着と大敗。その後、左肩跛行のため長期休養を余儀なくされます。

故障との闘い

長期休養を経て2003年に復帰するも、再び故障に見舞われ長期休養を繰り返します。2004年には大阪城ステークスで2年2か月ぶりの勝利を挙げますが、その後もエプソムカップでの2着など、目立った成績を残すものの、故障に苦しみます。2006年には5度目の長期休養に入るほどでした。2007年には古川調教師の定年退職に伴い、美浦トレーニングセンターの坂本勝美厩舎へ移籍。しかし、その後も思うような結果を残せず、6月14日にJRAの競走登録を抹消されます。

地方競馬での活躍と引退

JRAを退厩したローマンエンパイアは、地方競馬の金沢競馬場に移籍し、藤木一男厩舎に入厩。移籍後初戦となるダイヤモンド特別を勝利で飾り、その能力の高さを改めて証明しました。しかし、その後は脚部不安に悩まされ、2008年3月に競走馬としての引退が発表されました。

種牡馬としての成功と最期

競走馬引退後は種牡馬としての道を歩み始めます。2008年から繋養を開始し、初年度産駒がデビューした2011年には、2頭の産駒が勝利を挙げたことで、種牡馬生活を継続。2016年の種付けシーズンを最後に種牡馬を引退、ホーストラスト北海道で余生を送っていましたが、同年10月29日に胃破裂による急性敗血性ショックでこの世を去りました。

ローマンエンパイアは、華々しい勝利だけでなく、幾多の故障と闘いながらも、競走馬、種牡馬として、競馬界に大きな足跡を残しました。その不屈の精神と類まれな能力は、後世に語り継がれるべきものです。

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